歯の治療は削らない方が良い? 削った方が良い場合や削らない治療内容とは
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かつては虫歯治療といえば、とにかく歯を削ってその穴を埋めるという方法が主流でした。しかし現代では、歯の寿命をのばすためにできるだけ歯を削らない治療をしようという動きが広がっています。
- ・歯の治療は削らない方がいいって本当?
- ・歯を削らずにどうやって治療するの?
- ・どうして歯を削ると歯の寿命が減るの?
歯はできる限り削らない方が長持ちする! ただし例外もある
歯はできる限り削らない方が、歯の寿命を伸ばします。その理由は一度でも歯を削るとどんどんもろくなってしまうから。削る治療をすることで歯の寿命は断然短くなります。しかし、だからといって絶対削らない方が良いとも言い切れません。何事にも例外があるように、歯の治療についても削る方が良い場合があります。
大切なのは、歯が虫歯治療を受けずに済むように日ごろのケアを欠かさないこと。そして虫歯や歯周病を早期発見できるように、定期健診に通うことです。虫歯になってしまったときにできるだけ削らずに済むように、自分でしっかりと口内の管理をし、歯科のサポートを受けていきましょう。
歯の治療で削らない方が良い理由とは?
では、なぜ歯の治療で削らない方が良いと言われるのでしょうか? その理由は、次の2つが挙げられます。
- ・二次カリエスが起こりやすくなる
- ・削る範囲が大きいほど歯はもろくなる
歯を削ると、その穴を埋めるために詰め物や被せ物で蓋をします。しかし銀歯など被せ物の接着剤であるセメントは経年劣化で溶けだし、歯との間に小さな隙間ができるのですね。蓋と歯の間の隙間から細菌が侵入し、被せ物の下にある歯が再び虫歯になることを二次カリエスと呼びます。虫歯はどんどん進行していきますが、被せ物があるため痛みなどの自覚症状が出るまで気付けません。被せ物をあけてみたら神経まで菌に感染しており、歯を抜かなくてはならなくなっていたというケースもあります。
ポイントは、被せ物は持って8年程度ということ。素材が何であろうとも基本的には劣化しますので、二次カリエスの可能性が高くなっていきます。
また、虫歯治療では削ったあとに入れる詰め物の厚さを確保するため、健康な歯を大きく削る必要があります。削れば削るほど歯は弱くもろくなりますし、神経を取ればさらに歯の寿命は縮まります。そして歯を削る部分が大きければ大きいほど、銀歯など被せ物が接する面も大きくなり、二次カリエス発生の可能性が高くなってしまうでしょう。
一度でも削ると歯はどんどん弱まっていきます。自分の歯をいつまでも残してしっかりとモノを噛むためには、できるだけ歯を削らない方が良いわけです。
歯を削る治療をした人がたどる歯を失うまでの経過例
では、歯を削る治療をしていると、どのような過程を経ることが多いかの例を紹介します。
6歳で初の虫歯。小さな虫歯を削って治療し、詰め物を入れました。
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10代後半で二次カリエスが発生。詰め物の周辺から細菌が入り、大きな虫歯となりました。すでに詰め物では対処できないため、被せ物が入ります。
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20代で、強く噛んだ拍子にもろくなっていた歯が欠けてしまいました。そこからまた細菌が入り込み、新たな虫歯になります。
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30代になると多忙でなかなか歯医者へいけず、虫歯が悪化。ついに神経まで感染してしまいます。痛みから診察をうけ、歯の神経を取ることになりました。歯はほぼ銀歯の状態です。
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40代後半になると、今まで歯を支えていた歯根が疲労からついに折れてしまいます。仕方なく抜歯となります。
1つの歯がどんどん削られ、最終的には抜歯になってしまいました。こうならないように、そもそも虫歯予防や歯周病予防に力を入れることは大前提。しかし虫歯になったときにも被せ物や詰め物をできるだけせずに済むように、削らない治療をしていくことがおすすめです。
削らずに済む治療内容・削るべき治療内容
歯の治療ではできるだけ削らないことが歯の寿命を伸ばす、これは間違いありません。しかし何が何でも歯を削ってはいけないということではなく、削る治療を行うべき状態もあります。
ここでは削らずに済む治療内容と、削るべき治療内容を紹介していきます。
初期の虫歯は削る必要はない
虫歯は虫歯でも、初期であれば歯を削る必要はありません。初期の虫歯というと、まだ歯の表面に穴が開いていない状態。細菌の侵入が歯の表面のエナメル質や象牙質でとまっているレベルであれば、汚れを落として殺菌処理などをし、経過観察で様子を見ます。歯には唾液によって自然治癒的に固まる作用(再石灰化)がありますので、それを促すために歯科で口内環境を整えていき、自力での治癒へ誘導します。
歯は一度削ってしまえば元には戻せません。二次カリエスが起こらないように、むやみに歯を削らずに応急処置をして日ごろのケアに注力できるようにしていきます。
歯を削って治療すべき状態とは?
歯を削ってでもしっかりと治療すべきなのは、初期虫歯以外の状態です。たとえば神経まで菌が進入して痛みがひどいのに、歯を削りたくないからと我慢していれば悪化するばかり。結果的に歯を失ってしまうことになるでしょう。
歯に穴が開いている状態では、すでに遅いのです。あとで説明する削らない治療方法もありますが、多くの場合は歯を削って確実に治療することが大切。でなければ最悪の場合、菌が血管に入り込んで全身の健康を脅かします。
何がなんでも歯は削らない方がよい、そういうわけではないと覚えておいてくださいね。
虫歯になってしまった! 歯を削らずに済む治療方法3つ
では現在行われている「歯をできるだけ削らない治療方法」を3つ紹介します。
- ・フッ素塗布
- ・薬で溶かして虫歯を除去
- ・薬剤を塗布して蓋をする
実際にはこれら以外にも「レーザー治療」や「3種類の抗菌剤を使った治療」などもあります。しかし治療を行えるクリニックが限られるため、一般の歯科で受けられる治療法として3つを説明しますね。
フッ素塗布
虫歯レベルが永久歯のエナメル質までである初期虫歯では、フッ素塗布を行うことで歯の再石灰化を促します。まずは歯垢を徹底的に除去し、フッ素塗布でガード。口の中の環境を整えて虫歯の進行を抑え込む治療です。
薬で溶かして虫歯を除去
虫歯が象牙質まで達してしまっている虫歯にも有効な治療方法です。歯を削らずに薬を塗り込んで菌に侵された部分を溶かし、それを取り除いていきます。薬剤は虫歯部分にしか効かないため、周囲の健康な歯を削る必要がありません。ただし神経まで達している虫歯はこの方法では治療できませんので、できるだけ早く発見することが大切。この方法はカリソルブ治療と呼ばれており、保険が使えない自費診療です。クリニックによって実施しているかどうか、またかかる費用も違いますので、興味がある方はまずクリニックに相談しましょう。
薬剤を塗布して蓋をする
まったく歯を削らないわけではありませんが、神経近くまで浸食された虫歯を最小限の削りで治療する方法です。ドッグベストセメント治療と呼ばれるこの方法では、「ドッグベストセメント」という特殊な薬剤を使います。高い殺菌力があるセメントで、これを詰めるために少々歯を削り、セメントを詰めて被せ物をします。薬剤の殺菌力が持続するので虫歯は再発しにくく、歯周病の改善も期待できます。
アメリカでは一般的な治療方法ですが、日本ではまだ認可がおりていないため自費診療なのが残念な点。しかし深い虫歯でも神経を残せる可能性が高くなる治療法です。
セルフケアと歯科でのケアで削らずに済むようにしよう
虫歯治療ではとにかく歯を削っていたという時代は、昔のことになりつつあります。歯を削ると歯には大きな負担となり、虫歯が再発するリスクも上がってしまいます。さまざまな要因はありますが、削る治療を受けた歯は将来的に抜歯まで進んでしまうことも珍しくありません。そのため、できるだけ歯を削らない治療を望む方が増えています。
とはいえ大切なのは、やはり日ごろのケアです。歯磨きやフロスでの歯垢落としをしっかりと行い、歯科の定期健診に通って虫歯や歯周病にならないように気を付けていくことが重要ですね。
当院ではできるだけ歯を削らない治療、削る場合でも最小限にとどめるような治療を行っております。治療内容や自分の歯の状態に不安があるときは、ぜひご相談ください。
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