電動歯ブラシはよくない? メリット・デメリットや正しい使い方とは?
こんにちは、秋田のハピネス歯科クリニック 大久保です。
歯磨きは毎日の必須項目ですが、歯を磨く道具である歯ブラシには電動タイプもありますよね。手で持って磨く歯ブラシと電動歯ブラシ、どちらがいいのか悩む方はたくさんいます。
電動歯ブラシと手動で使う歯ブラシには、それぞれメリットやデメリットがあります。そのため、一概に「電動がよい」とか「手動がよい」とかは言えないのですね。
ここでは、電動歯ブラシってどうなの? よくないって噂があるけど? という疑問に答えていきます。電動歯ブラシのメリットやデメリット、正しい使い方、選び方のポイントや注意点などを確認していきましょう。
電動歯ブラシで磨いていたけれど虫歯になってしまった方や、購入を迷っている方は参考にしてください。
電動歯ブラシが「よくない」と言われる理由とは?
電動歯ブラシについて調べると、「歯や歯茎を傷つける」や「歯の表面が削れて知覚過敏になる」などといったネガティブな説明が散見されます。しかし、電動歯ブラシは決して歯にとってよくない製品ではありません。
「歯が削れる」「使っている内にしみるようになった」という声が上がる理由としては、過度なブラッシング圧や、不適切な使い方(ゴシゴシこすりつけるなど)が原因と考えられます。
ブラシを強く押し付けたりゴシゴシと力を入れて磨いたりすると、歯の表面を覆うエナメル質が削れたり、傷ついたり、歯ぐきが下がって知覚過敏が起きたりします。
この問題は「強い力での歯の磨きすぎ」であり、自分の手で歯ブラシを動かす場合でも発生します。電動だから特別危険というわけではありません。
歯にトラブルが発生する原因は「使い方のミス」
多くの専門家は、電動歯ブラシによるトラブルの多くは「使い方の誤り」によるものと指摘していますし、わたしもそう思っています。
たとえば、以下のような場合は「正しい使い方をしている」とは言えません。
- ・強い力で押しつけすぎている
- ・歯ぐきに直接当てすぎている
- ・時間をかけすぎている
- ・毛先の角度が間違っている
こうしたミスを避けて正しいブラッシング方法を実践すれば、電動歯ブラシの安全性は極めて高く、副作用のリスクもほとんどありません。大切なのは、正しい使い方をしているかどうかです。
実際の調査ではトラブル率はさほど高くない
「それでもまだ不安」と悩む方のために、実際の調査結果を紹介します。
①スイスの研究チーム(MDPI 2021)による国際的な文献レビューでは、電動歯ブラシによる損傷リスクは手動と大差ないと報告されています(使用率に関しては日本人の想定値もモデル化に使用)。
出典:MDPI「Electric and Manual Oral Hygiene Routines Affect Plaque Index Score Differently」
②2023年のドイツの臨床研究でも、電動歯ブラシと自分の手で歯ブラシを使って磨く人とでは、知覚過敏の発症率に統計的な差はないと示されています。
つまり「電動歯ブラシだから歯が削れたり知覚過敏になったりする、というわけではない」ことは、事実と認めて問題ないと思われます。
電動歯ブラシは正しい使い方をすればとても優秀!
電動歯ブラシは、人の手では動かせないほどの高速で振動し、歯についた汚れを落としてくれます。前述した通り、大切なのは、正しく使えているかどうかです。
実際の研究で、電動歯ブラシは手動歯ブラシよりもプラーク除去率が高いことが証明されています。たとえば、2014年のCochrane(コクラン共同計画)の大規模レビューでは、回転式や音波式の電動歯ブラシは、3カ月以上使用するとプラークの除去率が11%、歯肉炎の軽減率が6%高かったと報告されていますよ。
このレビューは56の研究からなる約5,000人分のデータを分析したもので、回転式や音波式の電動歯ブラシの効果がまとめられています。
出典: 出典:Cochrane Oral Health Group(2014年レビュー)
また、電動歯ブラシは自動で振動・回転するため、短時間で効率よく磨けます。モデルによってはタイマーや圧力センサーがついた商品もあり、前述したような歯表面の削れなどの心配がありません。
歯垢をしっかり取ることで、口臭対策も可能です。歯周病の予防やメンテナンス、あるいは矯正中やインプラント資料者の口腔清掃において、高い評価を受けているのです。
電動歯ブラシの特徴と種類
電動歯ブラシはその名の通り、電気によってヘッド部分が高速で振動し、歯の汚れを取り除く電化製品です。特徴は、一定の圧力と速度で歯磨きができること。電動歯ブラシを使う際、手は歯ブラシを支えるだけで上下には動かさず、歯に軽く当てるようにして使用します。
電動歯ブラシの種類は、大きく分けると次の4つがあります。
【振動式歯ブラシ】
ヘッド部分が振動して歯垢を落としますが、振動数は少ないため、手動歯磨きと同じく自分で手を動かして磨く必要があります。数百円程度で購入できる商品があり、比較的安価です。
【高速回転歯ブラシ】
ヘッド部分が高速回転して歯垢を落としますが、手動歯磨きと同じく自分で手を動かして磨く必要があります。特徴はヘッド部分が丸形をしていること。プラーク除去力が高いタイプです。
【音波歯ブラシ】
音波の高速振動で、ブラシの毛先が接していない周囲2mmまで汚れを落とせます。200〜300Hzの音波振動で、毎分2〜4万回振動するため、手動歯磨きのような手の動きは不要です。
【超音波歯ブラシ】
口の中の水分を利用し振動を発生させ、超音波で歯垢の一部を破壊して汚れを落とします。毎分約120万回、2万Hz以上の振動数がでておりプラーク破壊の役割が強く、軽く当てるだけで汚れが落ちます。
電動歯ブラシを使うメリット3つ
電動歯ブラシを使用するメリット、以下の3つを見ていきましょう。
- ・清掃効率がよい
- ・年齢を選ばず簡単に使える
- ・歯にかかる圧力を一定にできる
メリット①清掃効率がよい
手動で磨くことに比べ、圧倒的に掃除の効率が上がります。人間には不可能な速さで動き、短時間で歯の表面についた汚れをきれいに除去できます。
また、手を使って磨くときには届かなかった場所、たとえば歯の根本にある歯周ポケットの中も掃除可能です(振動のみタイプ以外)。
メリット②年齢を選ばず簡単に使える
電気で勝手に振動するため、使い方さえ間違わなければどの年齢層の人でも簡単に歯をきれいにできます。力を入れてはいけない製品であることから、力がない子供や高齢の方でも心配なく使用可能です。手が疲れることなくしっかりと歯磨きができます。
メリット③歯にかかる圧力を一定にできる
電動歯ブラシは電気の力で動くため、軽く支えるように持つだけで、歯に一定の圧力をかけて磨けます。手動であれば力を入れてしまうところと軽く磨くところの差がでてしまいますが、電動歯ブラシではその心配はありません。どの歯でも平等に同じ力で磨けます。
電動歯ブラシを使うデメリット3つ
では続いて、電動歯ブラシを使うデメリットも確認しましょう。以下の3つが考えられます。
- ・お金がかかる
- ・電池や電力が必要
- ・使い方によって歯や歯茎が傷つく恐れがある
デメリット①お金がかかる
手動の一般的な歯ブラシは100円程度で購入できますが、電動歯ブラシは数千円から数万円かかります。動かすための電気や電池代も必要で、ヘッド部分も定期的に購入して交換しなければなりません。消耗品、そして衛生商品であることを考えると、高級商品の部類に入るでしょう。
ただし家族で使う場合には、それぞれにヘッドを用意すれば本体は1台でOKです。
デメリット②電池や電力が必要
電動製品のため、電池か充電が必要です。充電式の場合は洗面所のコンセントにさしっぱなしにしておけますが、外へ持ち運びたい方は電池式を選ぶ必要があります。
デメリット③使い方によって歯や歯茎が傷つく恐れがある
電動歯ブラシは自分で「磨く」ための動きは不要で、磨く場所にヘッドを「移動させる」動きのみが必要です。しかし手動の歯ブラシに慣れている方は、ついつい手で磨く動きをしてしまったり、力を入れたりしてしまいます。
高速で振動しているところに力が加わると、歯の表面が削れたり歯茎に傷を作ったりする場合があり、痛みが発生することも。歯が削れると知覚過敏になるうえに、腫れや出血の原因になることもあります。
【関連記事】電動歯ブラシが歯茎に悪いかどうかについての記事はこちら
電動歯ブラシは歯茎に悪い? 良い影響・悪い影響と使用時の注意点を解説
電動歯ブラシと手動歯ブラシを比較してみよう
電動歯ブラシと手動歯ブラシをいくつかの点で比較してみましょう。
比較項目 | 電動歯ブラシ | 手動歯ブラシ |
---|---|---|
価格帯 | 数千円〜数万円 | 数百円 |
清掃にかかる時間 | 短い(おおよそ2分) | 長め(3分〜) |
清掃力 | 高い(歯周ポケットにも届きやすい) | 普通(細かい操作が必要) |
プラーク除去率 | 基準値より +11〜52%増(Cochrane等の研究による) | — |
歯肉炎改善率 | 約6〜11%改善 | — |
維持費 | あり(交換ヘッド、電池・電気代など) | ほぼなし |
ブラッシング圧 | 一定(モデルによって圧力制御あり) | 不安定(力をかけすぎることも) |
電動歯ブラシは正しく使いさえすれば、お金はかかっても歯の清掃において優秀です。手動では落としきれない汚れも落とせるため、短時間でしっかり汚れを落としたいという方にはおすすめですよ。
電動歯ブラシの選び方やポイント
電動歯ブラシを使ってみよう! と思ったら、自分にぴったりのものを選ぶことからスタートしましょう。
まずは前述した4つの種類から、使ってみたいものを選びます。比較的安価で使いやすいのは振動だけのタイプ。しっかりきれいに掃除をしたいという方は、機能性が高い超音波や音波のタイプを選びましょう。
次に、電池式か充電式かを考えます。電池式であれば持ち運びも簡単ですが、充電式の方がランニングコストは優秀です。
さらに気をつけたいのが、次の2点です。
- ・自分の口のサイズにあっているか
- ・付属ブラシがついているか
自分の口のサイズにあっているか
電動歯ブラシは作るメーカーによってヘッドの大きさが違います。ヘッドが大きいと広い面積を一気に磨けますが、奥歯には届きにくいといったデメリットもあるのです。一方、小さなヘッドは奥歯などには届きやすいですが、磨く時間は少々かかります。
電気屋の売り場に日頃自分が使っている歯ブラシと同じサイズのものを持っていき、比べてみるのが最も簡単で確実なサイズ合わせの方法です。顎が小さい人は特にヘッドの大きさには注意してください。あまり大きすぎると口の中に違和感があったり、えづいてしまったりする恐れがあります。
付属ブラシがついているか
電動歯ブラシでは、ヘッドの種類を選べる商品があります。たとえばコーヒー汚れなどのステイン用、歯垢除去用や歯茎ケア用など種類は多彩です。そのような、目的別に付属のブラシがついているかどうかを基準にするのもよいですね。
正しく使ってこそのメリット! 電動歯ブラシの使用方法
電動歯ブラシの正しい使い方を、部位別にここで確認しておきましょう。
【関連記事】歯科医師の考える電動歯ブラシの磨き方のコツについての記事はこちら
歯科医師の考える電動歯ブラシでの磨き方のコツとメリットやデメリット
歯の表面の磨き方
歯の表面にはブラシを垂直に当て、振動が均等に伝わるようにします。このとき、歯へ力を込めてブラシを押し付けないようにしましょう。
歯と歯茎の境目の磨き方
歯の根本、歯茎との境目のところには歯周ポケットと呼ばれる溝があり、歯垢が溜まりやすいところです。ブラシは45度の角度で斜めに当てて磨くようにしましょう。ブラシが歯周ポケットに入り込み、汚れをかきだします。
噛み合わせ部分の磨き方
上下の歯が噛み合わさるところは、ヘッドをその度に上下へ向けて垂直に当ててください。歯の頭部分は凹凸があるため、まっすぐ当てることで凹凸にブラシの毛先が当たります。
電動歯ブラシを使うときの注意点
では、電動歯ブラシの注意点3つを順番に説明します。
- ・ブラシヘッドは3ヶ月おきに交換する
- ・歯磨き粉は使用しない方がいい
- ・都度メンテナンスが必要
ブラシヘッドは3ヶ月おきに交換する
作っているメーカーによって違いますが、多くのメーカーがヘッドの交換目安を3ヶ月としています。普通の歯ブラシのように毛先が開いて来なくても、3ヶ月程度使っていたらヘッドを取り替えましょう。
歯磨き粉は使用しない方がいい
電動歯ブラシは高速で振動するため、一般的な歯磨き粉を使うと泡だらけになってしまいます。実際には磨けていないのに、泡が多いと磨いたような気になってしまうケースも。また、研磨剤が含まれた歯磨き粉の使用で歯の表面が削られ知覚過敏になってしまうこともあります。
歯磨き粉は使わないか、研磨剤不使用で泡立ちにくいジェルタイプなどを選びましょう。
都度メンテナンスが必要
使用する度にブラシを洗い、風通しのよいところに保管します。このとき、ブラシと本体のつなぎ目部分の汚れも落として洗ってください。つなぎ目部分に汚れが溜まれば接触不良を起こし、故障に繋がります。
電動歯ブラシでよくある質問:3つのQ&A
電動歯ブラシについて、よくある3つの質問と答えをみていきましょう。
Q:「強く当てなきゃ意味がない?」
A:逆効果です! 強く当てるとエナメルに負担がかかり、むしろ効果が低下します。優しく、毛先を隅々に送り込むイメージで使いましょう。
Q:「小学生や高齢者にも使える?」
A:はい。RCTでは3〜6歳児で32%、7〜9歳児で52%の除去効果が確認されており、高齢者にも簡単・確実に使えるメリットがあります。
※「RCT」とは Randomized Controlled Trial(ランダム化比較試験) の略。医療や教育などの分野で最も信頼性の高い研究手法の一つ。被験者をランダムに2つ以上のグループに分け、「使用したグループ」と「使用しなかったグループ」で結果を比較する方法。
Q:「歯並びが悪くても大丈夫?」
A:ブラシヘッド形状やソニック、回転式など種類に応じて歯間や矯正器具周りもしっかり届くモデルがあり、in-vitro実験でも実証済みです。
※in-vitro実験とは体外実験のこと。人体ではなく人工的な環境(試験管やシャーレ)などで細胞や組織を使って行う実験。
実際に使ってみた感想【ユーザー体験】
以下は、実際に電動歯ブラシを使っている方のお話です。実感は人によって異なりますが、このような感想を持つ方もいるのだな、という参考にしてくださいね。
30代女性:「最初は歯がしみたけど、圧を弱めて角度を意識したら快適になりました。定期検診でも『しっかりきれいに汚れが取れています』と褒められました!」
40代男性:「奥歯の内側や歯並びの悪いところが磨きづらくて、いつもフロスでゴッソリ取れるのが気になっていました。でも電動歯ブラシに変えて1週間くらいで、フロスのときの“引っかかり感”が激減してびっくり。磨けてないってことだったんですね。今は歯医者さんにも『汚れ残りが減ったね』って言われるようになりました!」
50代女性:「加齢のせいか口臭が気になりつつありました。母の日にもらった電動歯ブラシは面倒くさい歯磨きがちょっと楽になったかな、という程度の感想しかありませんでしたが、口臭が気にならなくなったと夫から言われて効果を実感しました」
60代男性:「手の力が弱くなってきた私でも、電動のおかげで毎日2分が苦になりません。歯科医からも“磨けてるね”と言われて安心しました。」
電動歯ブラシは便利で優秀! 正しい使い方で“よくない”は解消できる!
正しく使いさえすれば、電動歯ブラシは効率的・効果的に歯の汚れを落とせる製品です。お金はかかりますが、人力ではなかなか落とせない歯垢もすっきりと除去できます。
ただし、歯がつるつるになる分しっかり磨けていると考えて丁寧さがなくなると、磨き残しがでて虫歯になることも。機械を過信せず、丁寧に隅々まで磨こうとする姿勢は必要ですよ。