8020運動とは? 運動の理由・達成率・今からできること
この度の新型コロナウィルスに罹患された方々、並びに感染拡大による影響を受けている方々に、心よりお見舞い申し上げます。当院では患者さまとスタッフの安全確保を実施しています。
<当院の感染拡大防止について>
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- 次亜塩素酸水を使用し、空間除菌を行っております
- 感染リスクの高い来院者さまへの受診の自粛のご依頼、又はご予約日の変更のお願いをしております
ご理解とご協力賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
日本は世界でもトップクラスの長寿国。平均寿命は男女ともに80歳を超えています。
しかし、健康寿命は平均寿命に比べてそれぞれ10歳程度低くなってしまいます。せっかく長生きしても健康でなければつらいですよね。
健康寿命に大きなかかわりがあるのが「歯」。80歳のときに自分の歯を20本残そうという「8020運動」は、将来の自分の健康寿命を伸ばすためでもあるのです。
ここでは8020運動とは何か、理由や達成率、達成するために今からできることなどを紹介します。
8020運動を理解して自分の健康・寿命を守ろう!
先ほど述べたように、日本の平均寿命は世界でも長く、長寿大国と呼ばれています。しかし厚生労働省の「健康寿命と健康寿命の推移」によると、日常生活に制限のない期間=健康寿命では、2016年の時点で男性72歳、女性が74歳です。
参考:厚生労働省「健康寿命と健康寿命の推移」
つまりそれぞれ死ぬまでの10年近くは、何らかの病気をしたり介護状態であったりして生きるということですね。
できれば元気なままで長生きしたいもの。
平均寿命ではなく健康寿命を伸ばすためには、運動や睡眠などとともに「歯のケア」も必要です。
歯でしっかりものを噛むことによる健康への影響は大きく、世界では「80歳のときに20本以上の歯を保とう」という運動が広がっています。
8020運動を理解し、健康なままで長生きできるように取り組んでいきましょう。
8020運動とは? スタート時と現在はどのように変わったか
8020運動(はちまるにいまるうんどう)は、日本で1989年からスタートした厚生労働省と日本歯科医師会が推進する運動のこと。
内容は「80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという目的で、口内ケアをしていく」ことです。
人の歯は親知らずを抜くと28本あります。これが年を重ねるにつれてさまざまな口内トラブルからなくなっていき、50代で目に見えて減少し始め、80歳になったときにはほとんど残っていないというのが昔の日本人の状態でした。
人は20本以上の歯があれば咀嚼状況が良好という調査結果があり、噛むことによる健康上のメリットを受けられます。
健康寿命を上げるためには、できるだけ自分の歯を残ししっかりと噛めるかどうかが重要です。
歯のケアをして歯の寿命を伸ばし、生涯20本以上の自分の歯を残そうという8020運動は、多くの国が実施しています。
8020運動の達成率変化
運動がスタートした1989年の時点では、日本の8020運動達成率はわずか7%程度。当時の日本人で80歳以上の人に残っている歯の平均は、わずか4本でした。
しかし歯科による啓蒙運動や歯が悪くならないようにケアする「予防歯科」などの影響によって、順調にパーセンテージは上昇。厚生労働省による歯科疾患実態調査によると、2005年には8020運動の達成率が約21%、そして2016年には約50%までになっています。
8020運動の成果はでているといえますね。
将来自分の歯が少ないと起こるリスク3つ
20本以上歯が残っていれば咀嚼能力が十分であることは先ほど述べました。では噛めないと、どんなリスクがあるのでしょうか。
歯を失ってしっかり食物を噛めなくなってしまった場合、考えられる代表的なリスクは次の3つです。
- ・認知症発になるリスク
- ・イライラして攻撃的になる
- ・生活の質が低下する
認知症になるリスク
人はものを噛むことで脳に酸素や栄養が送られ、脳細胞が活性化します。しかし歯がなくなると噛めないので、噛むことで刺激される脳の領域に刺激がいきません。
寝たきりの人がどんどん筋力を失うように、脳も使われず刺激を受けなければ弱って低下します。
噛むことで刺激される脳の部分は、「前頭前野」という領域。ここは思考や学習、計画立案など論理的な働きを担っています。
正しく噛めなくなることで前頭前野が弱り、認知症発生へとつながるのですね。
66万人の欠損歯の人が対象となった研究では、歯が20本~28本残っている人の認知症リスクに対し、歯が1~9本しか残っていない人が持つリスクは31%増。この割合は、歯を失った数が多ければ多いほど増えます。
イライラして攻撃的になる
人はストレスを感じると唾液の分泌が減り、無意識に奥歯を噛みしめます。ものを噛むことでリラックス効果を生むため、意識せずに食いしばってしまうのです。
しかし奥歯がないと、噛みしめられません。いざというときに力がでないうえリラックス状態が得られず、イライラして精神的余裕がなくなり攻撃的になります。
歯がないことで発音が不明瞭になり、他人との意思疎通も難しくなるため話さなくなるなど、悪循環にはまる人も多いのです。
生活の質が低下する
歯がなくしっかりとものを噛めないと、生活の質が低下します。食べる・笑う・話すが正常にできることは、人の健康だけでなく自尊心などにも影響するでしょう。
素敵な笑顔を見せ美味しいものを心行くまで食べられるようにするには、歯は不可欠です。
8020運動を達成するために今からできること4つ
今までに口内トラブルが多かったという人も、今からできることをして1本でも自分の歯を残しましょう。
8020運動での20本は、あくまでも目安。噛む機能という意味だけであれば自前の歯である必要はなく、義歯などで欠損をうめれば問題ありません。
しかし義歯にはそれなりの苦労や制約がつきまといます。形があわないとか痛みがあるとか、硬いものが噛めないとかいったデメリットがあるため、やはり自分の生まれ持った歯が一番。
そのためできることは、次の4つです。
- ・毎日の口内ケアをしっかりする
- ・歯科の定期健診を受ける
- ・口内トラブルの知識を増やす
- ・唾液の分泌を促す
毎日の口内ケアをしっかりする
基本はやはり毎日の口内ケアです。正しい歯磨きをし、デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯垢をしっかり除去しましょう。
睡眠中は唾液の分泌が減り細菌が増殖しやすいため、特に夜のケアは丁寧にしましょう。歯磨きとフロスをした後で、マウスウォッシュを使って減菌をすることがおすすめです。
歯磨きの方法が間違っていれば、どれだけケアに時間をかけてもトラブルを招きます。歯科で歯磨き指導をしてもらえるので、相談してみましょう。
歯科の定期健診を受ける
日本では「悪くなってから歯科へいく」という考え方がまだ多いのですが、最近は予防歯科も広がっています。歯が悪くなる前に歯科で専門のケアを受け、健康な口内を守りましょう。
まずは歯科へいき、今持っているトラブルを治療します。その後は3カ月に一回、最低でも半年に一回は歯科の定期健診を受診し、トラブルが発生しないようにしてくださいね。
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歯の検診の頻度は3カ月に1回が推奨! その理由と検診内容や費用など
口内トラブルの知識を増やす
日本人が歯を失う最も多い原因は、歯周病です。歯周病は日本人の成人の約8割がかかっているといわれる国民病。菌が歯肉で炎症を起こし、骨を溶かして最後には歯が抜ける病気です。
しかし歯周病について知っている人はあまり多くありません。歯周病の他にも虫歯や口腔がんなどさまざまな病気・トラブルがあるので、興味を持って知識を手に入れましょう。
トラブルについて知っていると、正しく怖がれます。知識があれば口内ケアをするモチベーションも保てるため、気になったことはまず調べるという習慣を身に着けてくださいね。
唾液の分泌を促す
唾液にはさまざまな役割があります。食べ物の消化を助けるだけでなく、歯についた食べかすを洗い流したり細菌の増殖を抑えたりなどです。
そのため、唾液の分泌は少ないより多い方がよいでしょう。
唾液を増やすにはよく噛むことが近道。食事のときにはしっかりと噛む、口が乾いているなと思ったらガムを噛む、唾液腺をマッサージするなどを試してください。
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唾液が持つ7つの効果とは? 分泌量のチェックや唾液を増やす方法を紹介
80歳で自分の歯を20本保つ! 健やかな老後のために必要なこと
自分の歯で噛むことは、健康に直結します。さらに笑う・話す・食べるといった生活の質を左右する行動にも大きな影響を持つのです。
80歳のときに自分の歯を20本以上保ちましょう。これは義歯でも構いません。しっかり噛めることが重要です。
今からできることをするだけで、将来の健康寿命が違ってくるはず。自分のため、家族のために、歯を大切にしていきましょうね。