口角炎の原因・症状・治療法とは? カンジダ菌との関係や予防対策も解説
こんにちは、秋田のハピネス歯科クリニック 大久保です。今回は、多くの方を悩ませている口角炎の原因や症状、治療法について解説します。
口の端が切れたようになり、とても痛い口角炎。いつの間にかでき、しばらく耐えていたらまたいつの間にか消えていたというケースが多く、原因や治療法について知らないという方もいるでしょう。
この口角炎の原因のひとつに、カビがあります。カンジダと呼ばれるカビで、人の口内に常在する菌の一種です。
口角炎に悩む方のため、ここではカンジダ菌が原因でできる口角炎の症状や治療法、口内炎など似ている病気との違い、予防法、よくある質問などについて紹介します。繰り返す口角炎に悩んでいる方は、ぜひ最後までお付き合いください。口角炎の正しい対処法や予防法を知っておきましょう。
口角炎はカンジダ菌が原因!? 早く治すには除菌と予防がカギ
口角炎が繰り返し発生したりひどくなったりするのは、多くの場合、人の口内にいる常在菌・カンジダ菌の影響によるものです。
カンジダ菌はカビの一種で、普段から人の口の中に存在しています。通常は人間の唾液の影響で、人体に悪さはしません。ところがさまざまな要因で人の免疫力が下がったとき、菌の力を抑え込めなくなることがあります。その結果、カンジダ菌は体内へと入り込んで感染を引き起こしてしまうのです。
炎症をひどくしているのは菌なのですが、そもそも菌が繁殖するようになった原因は、免疫力が低下したためです。多くの場合、口角炎は自然治癒しますが、それは人の体調がよくなるに合わせ、免疫力が回復するからと考えられます。
つまり炎症による痛みをどうにかしたければ、まずは体調を整えて免疫力を向上させることが大切です。他にもさまざまなケースがあるため治療法もいくつかありますが、基本であり、重要であるのは免疫力を戻すことと覚えておいてください。
カンジダ性口角炎を早く治すため、免疫力の回復と除菌を同時に行いましょう。
口角炎の症状とは? 口角炎と似た病気との違い
口角炎(別名:口角びらん)では、人の口角(上唇と下唇が合わさる口の両端部分)に亀裂が入って炎症が起きます。
原因はいくつかありますが、最も多く発症するタイプは口内にいるカンジダ菌による「カンジダ性口角炎」です。症状は、唇の両端や片側が赤く腫れあがったり、口角に白色の苔状のものがあらわれたりするだけでなく、味覚異常が発生することもあります。
食事などで口を開けると切れて出血してしまううえに、アトピー性皮膚炎の湿疹ができることもあり、痛みがあって見た目もよくありません。
子供や年配者など、免疫力が低い人によくみられます。特に子供では男の子、中高年以降は女性に、より多く発症しているようです。
そんな口角炎と似ている病気には「口内炎」と「口唇炎」があります。それぞれがどのような病気であるかを、以下で続けて説明します。
口内炎
口内炎は、頬の内側や唇の裏側、舌の付け根、歯肉などの粘膜に炎症が起こる病気です。口の中の細菌が原因で起こるもの、自分で噛んで怪我をしたところに細菌が入って起こるもの、栄養不足で起こるものとさまざまな種類があります。
症状は、口内の粘膜や舌の表面が切れたようになって腫れ、白っぽい円ができます。食事のときに食物がしみ、強い痛みがでることが大きな特徴です。
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口唇炎
口唇炎は何らかの原因で唇が炎症を起こす病気です。突然唇が腫れる「口唇腫脹」や、ある物質が唇に接したことで炎症が起きる「接触口唇炎」、唇の皮が剥がれ続ける「離脱性口唇炎」などがあります。
主な症状は、口角部・口唇部の乾燥や亀裂、ただれ、発赤、出血などです。
それぞれの見分け方
口の内外に細菌が影響して起こる炎症というくくりでは似た病気ですが、原因は同じものも違うものもあります。
口角炎・口内炎・口唇炎の見分け方で簡単なのは、炎症が起きている場所で考える方法です。口内炎は口の中、口角炎は口の外側の端、口唇炎は唇の上で発症します。
いずれも強い痛みを伴うため、日常生活に影響を及ぼします。病院を受診するなど、早めに対処することが大切ですよ。
口角炎の5つの原因とは? なぜカンジダ菌が悪さをするのか
つらい症状を持つ口角炎を悪化させるのは、カンジダ菌であることが多いと述べました。
続いてはカンジダ菌とはどのようなカビなのか、その具体的説明と、カンジダ菌が悪さをするようになるそもそもの原因について、順番にみていきましょう。
カンジダ菌について:常在菌なのに悪さをする理由
まずはカンジダ菌について少し詳しく説明しますね。
人の体内には、さまざまな微生物が共生しています。その中のひとつが「カンジダ菌」で、人の口内に多くいるのが「カンジダ・アルビカンス」という種類です。
カンジダ菌は約1億5000万年前からの進化によって、共生と攻撃性の二面性を持っています。普段は無害で人の体内の微生物バランスを保つ役割を果たしていますが、免疫力の低下などさまざまなきっかけにより、異常に増殖して健康に悪影響を与えます。
人の免疫力の低下時に、カンジダ菌は「アラビノース」や「酒石酸」、「シュウ酸」などの毒素を吐き出します。その結果、体内のエネルギー生成が妨げられて慢性疲労の原因になったり、栄養吸収を阻害したり、免疫機能を妨害したりします。
では、そんなカンジダ性口角炎が発生する主な原因5つについて、次からみていきましょう。
原因①免疫力低下
人は自然治癒能力を持っていますが、それが「免疫」と呼ばれるものです。この免疫力はストレスを受けたり寝不足であったり暴飲暴食をしたりすると、通常のレベルを維持できなくなります。
成人の口の中にいる細菌は常時1000億個を超えるとも言われていますが、普段は免疫力でその活動を抑えているのですね。いわば、菌と共存している状態です。しかし免疫力が下がれば菌の活動は活発化し、体内に侵入して悪さを働きます。
人の口の端は構造的に唾液が溜まりやすく、唾液の消化酵素によって乾燥しやすい場所です。乾燥で表面が裂けたりかさぶたになったりしやすいため、免疫力が低下するとそこから菌が入り込んで炎症を起こします。
原因②唾液量の減少
カンジダ菌が存在するのは、人の粘膜の表面です。通常は口内に十分な唾液があるため、菌が粘膜に張り付いても体内に入ることはできません。しかしストレスを受けるなどが原因で唾液の分泌が減ってしまえば、カンジダ菌は粘膜のバリアーを破って体内へ侵入します。
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原因③口のまわりを舐めることによる乾燥
特に口角炎ができやすい人は、口のまわりを舐める癖があります。
前述したように、唾には消化酵素が含まれています。そのため舐めた瞬間は潤ったように感じても、実際には肌の油分が減って皮膚は乾燥してしまうのですね。
粘膜は乾燥に弱いので、潤いがなくなると簡単に亀裂が入り、そこから菌が侵入します。
原因④薬剤による口腔環境の変化
処方され、服用している薬による影響もあります。
糖尿病や肝疾患、免疫制御剤、HIV感染症、副腎皮質ステロイド内服などでの治療中は、服用する薬によって細菌のバランスが崩れて口内環境が変化します。その結果、炎症が起こりやすくなるのです。
具体的には、長期にわたって抗生物質を服用しているときに注意が必要です。抗生物質を飲み続けていると薬が効く細菌が少なくなり、薬が効かない細菌が増えだします。そしてカンジダ菌は真菌のため、そもそも抗生物質が効きません。その結果、口内でどんどんカンジダ菌が増えるのでバランスが崩れ、炎症が起こりやすくなります。
カンジダ菌(真菌)に抗生物質が効かない理由
カンジダ菌に抗生物質が効かない理由は、菌という呼び方は同じでも、細菌とは違うものだからです。抗生物質が効果的なのは細菌で、別の菌である真菌に対して有効なのは「抗真菌剤」です。
そのため、カンジダ菌が原因の口角炎には、抗真菌剤の摂取が必要になります。
原因⑤栄養不足
栄養不足も大きな原因の1つです。ビタミンB2、B6、そしてB12などの不足によって、口角炎が発症します。
ビタミンの他には、ミネラルや鉄分の不足が影響することもあるでしょう。栄養不足が原因で口角炎ができている場合には、しっかりと栄養をとることで徐々に回復していきます。
食事は栄養バランスを考え、1日3食きちんと摂るようにしてください。ただし、食べれば栄養は不足しないからよいというものでもありません。胃腸の健康を守るため、暴飲暴食は避けましょう。
カンジダ性口角炎の3つの治療法|除菌と体質改善の両輪がカギ
カンジダ菌に抵抗し、健やかな口角に戻すためには、以下3つの方法があります。
- ・抗真菌薬を使う
- ・保湿と外的刺激の遮断をする
- ・抵抗力・免疫力を回復させる
抗真菌薬を使う
前述したように、カンジダ菌には抗真菌薬が効果的です。
軽傷から中等症の場合は、ミコナゾールゲルやミコナゾール付着錠、アムホテリシンBシロップなどが使用されます。
これらの薬剤は内服で使用しますが、他の薬剤との相互作用が多いため、他の薬を服用している場合は使用前に必ず担当医や薬剤師へ相談しましょう。
また、症状が改善しても、医師の指示なく勝手に服用を中断しないようにしてくださいね。カンジダ菌が完全に除去されていなければ、すぐに再発してしまう恐れがあります。処方薬は最後まで服用しましょう。
保湿と外的刺激の遮断をする
患部の保湿と外的刺激からの保護が必要です。
ワセリンや保湿ジェル、スプレーなどを使って乾燥を防ぎ、亀裂の進行を抑えましょう。
水分摂取を心掛けたり唇を舐めないように気を付けたりし、マスクをして外敵刺激から傷口を守ってください。
抵抗力・免疫力を回復させる
前述したように、免疫力がもとに戻れば自然に口角炎も治癒します。処方薬が原因ではなく免疫力の低下や唾液・栄養の不足であれば、生活習慣を見直すことが大切です。
夜はなるべく6時間以上眠るようにし、入浴や運動、ストレッチなどでストレスを上手に解消しましょう。体が冷えないようにすることも、免疫力回復につながります。
再発防止のために、体質から整える視点を持つようにしてください。
どこまでならセルフケアで対応するかについて
口角炎の症状が軽症なら、まずは保湿・生活習慣の改善で様子を見るようにしましょう。
ただし「2週間以上治らない」「左右両側に出る」「痛みや赤みが強い」などの場合はセルフケアでは完治が難しい可能性があります。できるだけ早めに病院で診察を受けるようにしてください。
放置が慢性化につながり、その結果治りにくくなる事態に陥るため、セルフケアで様子をみても改善しなければ、病院へ行くことが大切です。その際は、10日ほどを目安にしましょう。
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カンジダ性口角炎で受診する病院は何科? 検査内容や治療法
口角炎の専門は皮膚科です。ただし口周辺なので歯科でも口腔外科でも診察は受けられますし、内科や耳鼻科でも診てもらえます。または、インターネットで口角炎の診療について触れている医療機関を探すという方法もあるでしょう。
どんな検査が行われる?
病院では以下のような診察や検査をします。
- ・病歴や食生活についての聞き取り
- ・口角の状態の観察・問診
- ・カンジダ菌の検出(口角部位から綿棒で検体採取後、検査)
- ・血液検査(必要に応じて)
病院での治療法
治療方法は、基本的には薬物治療です。前述したような内服液やワセリンなどの保湿剤、炎症があればステロイド剤、場合によってはビタミン剤などが処方されます。
日常でできる口角炎の予防&再発対策
症状がでてから治療をするのでは、しばらく痛い思いをすることになりますよね。ここで一度、口角炎の予防法についても確認しておきましょう。
普段から注意することは、次の4つです。
- ・薬を長期的に使用しない
- ・口内清掃を頑張る
- ・唇を乾燥させない
- ・生活習慣の改善と維持
薬を長期的に使用しない
現在何らかの病気のために薬を服用している場合、治療優先のため薬の服用はやめられないでしょう。それでも口角炎がなかなか治らなければ、一度担当医に相談してください。
そうではなく、ちょっとした風邪などでも気軽に抗生物質を飲んでいる人は、他の方法で風邪を治していく必要があります。抗生物質が必要になるような病気は、多くの場合が生活習慣を見直すことで改善・予防が可能です。
持病があるなどの場合以外は、できるだけ市販薬や処方薬に頼らず、自己免疫で治していく意識を持つようにしましょう。
口内清掃を頑張る
口内の細菌活動を抑制するため、日ごろの口内清掃を頑張ることも大切です。口の中をできるだけきれいに保つ努力をすれば、口内菌は増殖しにくくなります。
歯磨きは食事の後に毎回行い、デンタルフロスや歯間ブラシも使って歯間の掃除も行いましょう。眠る前にはマウスウォッシュで減菌し、朝起きたときなどにうがいをする習慣を持ってください。習慣にすることで口内の清潔が保ちやすくなるだけでなく、口臭なども減少しますよ。
唇を乾燥させない
唇が乾燥すると割れてしまううえに、潤わせようと舐めてしまうリスクも上がります。
普段から唇は乾燥させないように、できるだけ注意しましょう。リップクリームなどもよいですが、化粧品による荒れが気になる方は、はちみつを塗るという方法があります。ぜひ試してみてくださいね。
生活習慣の改善と維持
免疫力は、ストレス過多・睡眠不足・運動不足・暴飲暴食などによる胃腸の荒れによってひどくなってしまいます。
まずは1日3食をバランスよく食べるように意識づけ、できるだけ運動をするようにしましょう。特別ハードな筋トレをする必要はなく、全身運動でなおかつ有酸素運動である「歩行」に取り組むだけでも大きな影響があります。
日中に体をしっかり動かせば、適度な肉体疲労によって夜の睡眠の質も向上します。また、最適な睡眠時間は人によって異なりますが、厚生労働省の推奨は6時間以上の睡眠です。心身をしっかり休息させ、免疫力や抵抗力の向上を狙いましょう。
参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
【口角炎】よくある質問(FAQ)
最後に、口角炎におけるよくある質問を紹介します。
Q:口角炎ってカビ(カンジダ)なの?うつる?
A:はい、口角炎の原因のひとつにカンジダ菌というカビの一種があります。ただし、カンジダはもともと人の口の中にいる常在菌です。免疫力が落ちたり、口腔内が乾燥したときに異常繁殖し、症状を引き起こすことがあります。
他人にうつる可能性は非常に低いですが、免疫力が低下している人にスキンシップや器具の共有で感染するリスクはゼロではありません。
Q:市販薬でも治る?
A:軽い症状であれば、市販の口角炎用軟膏や抗真菌薬で改善することもあります。ただし、原因がカンジダなのか、ビタミン不足なのかによって必要な治療が異なります。数日使っても良くならない場合は、自己判断を避け、歯科や皮膚科を受診しましょう。
Q:口紅やマスクでも悪化する?
A:どちらも悪化の原因になることがあります。
口紅に含まれる成分が刺激となるほか、マスクも長時間の着用で口元が蒸れて菌が繁殖しやすくなったり、こすれて皮膚を刺激したりすることがあります。
一方で、乾燥や紫外線などの外的刺激から守るメリットもあります。
マスクを着ける場合は、通気性がよく肌にやさしい素材を選び、こまめに外して清潔に保つなどの工夫をしましょう。
Q:妊娠中でも治療できる?
A:できます。妊娠中はホルモンバランスの変化により、カンジダ菌が繁殖しやすくなるため、口角炎ができやすくなります。自己判断で市販薬を使うのではなく、必ず医師や歯科医師に相談し、安全な方法で治療を行いましょう。
Q:繰り返す場合はどうすればいい?
A:繰り返す口角炎は、多くの場合、体調や生活習慣に根本的な原因があります。ビタミン不足、鉄分不足、口呼吸、唾液の減少、免疫力低下などが複合的に関係している可能性があるのです。再発を防ぐには、食事・睡眠・保湿・口腔ケアを見直し、必要であれば歯科や内科で原因を調べてもらいましょう。
免疫力低下に注意! 痛い口角炎を発症させないようにしよう
今回は、口角炎の原因や症状、治療法などについて解説してきました。
口の端が切れて腫れあがり、口を開くたびに激痛が走るのが口角炎です。食事が不自由になり見た目にもよくないため、できてしまうと悩む人がたくさんいます。
口の中にいるカンジダ菌が原因のカンジダ性口角炎は、抗真菌薬を使えば治療可能です。しかし普段から健康的な生活習慣を心がけたり、口内清掃をしっかりと行ったりすることも大切ですよ。
そしてストレスをたくさんためないようにしましょう。適度なストレスは生活によい刺激を与えますが、過度のストレスは免疫力を下げてしまいます。
食事・睡眠・運動に注意を払い、健康な体を作り上げてくださいね。