なぜ日本人は歯周病罹患率が高い? 理由4つと予防歯科の大切さを紹介!
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<当院の感染拡大防止について>
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- 感染リスクの高い来院者さまへの受診の自粛のご依頼、又はご予約日の変更のお願いをしております
ご理解とご協力賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
歯周病は、歯を支える歯肉や歯茎など歯の周辺組織がかかる病気。食べかすなどが原因で歯周病菌が口の中で繁殖し、歯の周辺組織に炎症が起こる細菌感染症です。
この歯周病が、実は日本人が最も歯を失う原因であることをご存じでしょうか? なんと、日本人の成人の約8割が歯周病にかかっているというデータもあります。
- ・先進国なのに、なぜ日本人は歯周病にかかるの?
- ・他の国の人は歯周病にはならないの?
- ・歯周病にならないためにはどうしたらよいの?
なぜ歯周病が日本人の国民病に?治療技術はあっても予防が下手
公益財団法人8020推進財団が2018年に出した「永久歯の抜糸原因調査報告」によると、日本人が歯を失う原因の1位は歯周病です。特に40代後半からは虫歯よりも歯周病の方の割合が高くなっており、歯周病の罹(り)患者数は成人の約8割。そのため、歯周病は日本人の国民病であると考えられています。
こんな結果が出てしまうのは、日本人には予防歯科という考え方が海外ほどには浸透していないから。多くの日本人にとって、歯医者は「悪くなった歯を治療してくれるところ」であり「歯や歯の周辺組織を健康に保つところ」ではありません。
日本の治療技術は高く、歯ブラシなどの口内清掃道具はたくさんの商品が販売されています。テレビや雑誌などでも歯ブラシや歯磨き粉、マウスウォッシュ、フロスなどいろいろな商品が宣伝されていますよね。
しかし口内清掃技術が下手で、予防に対する知識と興味が低いため、一向に歯周病患者の数は減りません。大切なのは治療に行く前の、予防なのです。
日本人にはなぜ歯周病が多い?考えられる理由は4つ!
ではより詳しく、なぜ日本人は歯周病にかかる割合が多いのかを考えていきましょう。ここでは、理由として以下4つの原因を紹介します。
- ・正常バイアスが働くから
- ・日本人の性質・同調圧力が強いから
- ・国民皆保険によって治療費が安いから
- ・飽食で甘いものが手軽に手に入るから
正常バイアスが働くから
正常バイアスとは、「自分にとって都合の悪い情報を無視、もしくは過小評価してしまう人の特性」を言います。
歯周病は虫歯と違い、重度になるまで自覚症状が少ない病気。そのため、少々の歯茎の腫れや口臭、痛みであれば正常バイアスが働き、無視してしまう人が多いのですね。異常を認めて歯医者に行ったりはしませんし、加齢を理由にして当然の症状だと思い込んでしまったりします。
日本人の性質・同調圧力が強いから
昔から島国で農耕民族、村社会で生きてきた日本人は、諸外国に比べて同調圧力が強いと言われています。これも原因の1つでしょう。
同調圧力とは周囲と行動や考え方を合わせ、足並みを揃え似たような行動をとることです。つまり、周囲の人が歯周病について話をしないし、予防のためと歯医者に行ったりもしていない、だから自分も行わないということですね。
みんながそれで大丈夫なのだから、自分もきっと大丈夫! そう考えてしまい、歯の健康を保つために歯医者に行く人が少ないのです。
国民皆保険によって治療費が安くなるから
そして、日本の素晴らしい制度でもある「国民皆保険」。これが日本人の口内環境にとっては、悪影響だと考えられます。日本人はみんな、健康保険に加入しなければなりません。そのため、私たちは3割負担で高度な治療がいつでも受けられます。
その点が、諸外国との違いです。たとえばアメリカでは虫歯などの歯科治療はかなり高額となるため、おいそれと受けられません。ですから、そもそも虫歯や歯周病にならないように子供のうちから予防をしっかりとすることが一般的。しかし日本では、特に自治体のサービスで子供の医療費はゼロと言うところも多く、歯が悪くなれば歯医者に行けばいいやと簡単に考えてしまうのです。
普段から懸命に口内清掃に努め、少しでも悪いところがあれば安い治療費で済むうちに治してしまうアメリカと、普段から口内清掃にさほど真剣にならず、悪くなってから歯医者に駆け込み治療をしてもらう日本人。どちらの口内状態が悪いかは、すぐわかりますよね。
飽食で甘いものが手軽に手に入るから
日本は、食べ物に溢れています。1日3食どころか5食の人もいますし、間食も多い国。そのため、口内の細菌にとっては餌が豊富にある状態なのですね。その上で口内清掃が歯磨きだけであれば、取れていない食べかすが原因となり、細菌はどんどん繁殖してしまいます。
日本人は歯が悪くなってから“治療”に行く
日本では、歯医者は虫歯など悪い歯を治療してくれるところという考えが浸透しています。もちろんそれは間違っていませんが、歯医者さんの役割は実に多彩なのです。たとえば以下の業務があります。
- ・歯ブラシの使い方指導
- ・口内清掃のチェックと清掃
- ・口内の病気の発見
- ・くいしばりなどアゴの状態・病気のケア
歯医者さんには、現在特に悪いところはないという状態のときにも通うべきです。掃除ができていない箇所を奇麗にしてもらったり、歯茎や歯の状態を確認してもらったりしましょう。それを「予防歯科」といいます。悪くなる前に、悪くならないようにメンテナンスをしてもらうという考え方ですね。
日本人は海外に比べて歯のメンテナンス割合が少ない
歯科メンテナンスの割合を紹介しますね。日本は先進国の中ではかなり低いレベルとなっています。ここでは歯の健康では世界トップレベルのスウェーデンと、国民健康保険がないアメリカを例に出します。
- ・スウェーデン・・・0~19歳100% 20歳~59歳90% 60歳以上80%
- ・アメリカ・・・所得400万以上80% 所得200万以上50%
- ・日本・・・全国民で2%
スウェーデンは予防歯科を30年以上前から行っているため、知識と行動が国民に浸透しています。アメリカは所得が200万円台の家庭においても50%が予防歯科を行っていますが、日本は何と2%! これは衝撃ですよね。
ちなみに、8020問題という言葉を聞いたことはありませんか?これは、80歳になったときに自分の歯を20本は残そうという運動です。
これが、日本は80歳で残っている歯の数の平均が7本。スウェーデンでは20本以上、普段から予防歯科に力をいれるアメリカやオーストラリア、オランダは15本以上です。
こうして数字で見ると、やはり日本人の歯の健康に対する意識は低いと言わざるを得ません。
大切なのは予防歯科! 日本人が歯周病を減らすためにできること
口内を清潔に保ち、好きな食事をしながら自分の歯の健康を守るには、予防歯科が大切です。最近は日本でも、治療にならないように予防するという考えが広がりつつあります。そのため、今日からできる歯周病を減らすための行動を見ていきましょう。おすすめなのは、以下の3つです。
- ・間食を控える
- ・歯ブラシとともにフロスや歯間ブラシを使う
- ・歯科の定期健診に年に2回は行く
間食を控える
人は食べ物が口に入っているとき、口内が酸性になります。酸性であれば歯の表面も溶けやすい環境なので、歯にとってはあまり良くありません。食べ終わった後30分程度で唾液によって中和されますが、できるだけ口内を酸性にしないためには間食を控えるのが正解。当然食事回数が多いと歯間に食べかすも詰まりやすくなりますので、虫歯や歯周病を減らすためにも間食はしないようにしましょう。
歯ブラシとともにフロスや歯間ブラシを使う
毎日行う口の中の掃除は、歯ブラシだけでは十分ではありません。歯間や歯表面の溝に入ったカスをしっかりと取ることが、トラブル予防になります。歯ブラシでは取れないそれら小さなカスは、フロスや歯間ブラシを使って奇麗に取り除きましょう。
欧米では、歯ブラシ+フロスをセットで行うのが一般的。最初は面倒に思うかもしれませんが、フロスを使えば治療済みの歯の詰め物などの不具合も発見でき、良いことが多いですよ。
なお、フロスを使うか歯間ブラシを使うかは、担当する歯科に相談してください。一般的には、歯間が大きく開いている方以外はフロスを使ってケアをします。
歯科の定期健診に年に2回は行く
大切なのは、何も異常がないときにも歯医者へいくこと。どんなに少なくても、半年に1回は定期健診を受けて口内のチェックを受けていただきたいものです。徹底的に口内の掃除をし、歯ブラシでは取れない歯垢を取り、歯に異常がないか確認してくれます。もし悪いところを見つければ早期治療につながり、患者本人の金銭的・体力的・時間的負担も軽くなりますよ。
予防歯科で歯周病をなくす!8020を達成しよう
日本人に歯周病が多い原因は、予防歯科という考えがまだまだ広がっていないから。虫歯や歯周病などのトラブルが起こらないように、日頃からしっかりと口内ケアをしていく必要があります。
歯周病は怖い病気です。毎日のケアと半年に1度の定期健診で歯周病などのトラブルを予防し、80歳になったときに20本以上の歯が残っているように頑張りましょう。