【歯科医が解説】差し歯がドブ臭い原因は? 匂いのチェックリスト・改善と予防法を紹介
こんにちは、秋田のハピネス歯科クリニック 大久保です。
歯科で治療をして差し歯をいれたら、そこ辺りからなんだか強烈な匂いがする……。ドブ臭くてつらい! そういう方は多いですよね。
差し歯を入れたときにきちんと治療をしたはずなのに、どうして匂いが出てくるのでしょうか? 口臭は対面での会話に差しさわりがあり、社会生活に大きな影響を与えます。そのため、できるだけ早く改善したいですよね。
ここでは差し歯がドブ臭い理由やチェックリスト、その改善方法、予防方法などを紹介します。何だか口が臭いかもと思う方は、匂いの改善のためぜひ参考にしてください。
差し歯がドブ臭いのは口内トラブルの印! 早めに歯科を受診しよう
全身のどこであっても、強烈で嫌な臭いがあるというのは、そこで何らかのトラブルが発生している証拠です。痛みやしびれなどの自覚症状がなくても、嫌だなと感じる臭いがある場合には注意しなければなりません。
とはいえ、一般的な口臭にはさまざまな原因があるもの。たとえば口内の清掃状態が悪く、歯が汚れているから臭いがするという場合では、丁寧な歯磨きをすれば解決します。
しかし差し歯や銀歯といった、治療したあとの場所から嫌な臭いがするのは問題です。多くの場合何らかの病気、異常が起きていると考えられるため、取り急ぎ歯科の受診をおすすめします。
指で差し歯周辺をなぞってみてください。その指が強烈に臭うのであれば、歯の外側もしくは内側のいずれかにトラブルが発生しています。
早めの対処が、後々の治療時間やそれにかかるコスト、痛みのレベルなどを変えますよ。時間を作って担当歯科医に相談してみましょう。
差し歯とは? 構造と種類
差し歯とは、虫歯や歯周病などで歯の大部分を失ってしまった場合に、その上から被せる人工の歯のことです。一般的に「差し歯」と総称されますが、実は「コア(土台)」と「被せ物」という2つの部分で構成されています。
土台となるコアは、残っている歯根に差し込むようにして固定され、その上に歯の形をした被せ物を装着することで、失われた歯の機能と見た目を回復させます。
被せ物の種類は、保険適用の銀歯やプラスチック、そして自費診療のセラミックやジルコニアなどさまざまです。自費診療のものは見た目が美しく、劣化しにくくなっています。どの素材を選ぶかによって、機能性、見た目、そして費用が大きく変わってきます。
差し歯がドブ臭い? その理由5つ
では、差し歯がドブ臭い理由、以下の5つの理由をみていきましょう。
- ・虫歯
- ・細菌が繁殖して出すガス
- ・歯の神経が死んでいる
- ・進行した歯周病
- ・副鼻腔炎
虫歯
差し歯周辺がドブ臭いとすれば、最も多い原因は虫歯です。
差し歯や銀歯などの詰め物が入っているところに経年劣化などで隙間ができてしまうと、そこから細菌が侵入します。そして繁殖して侵食し、発酵してものが腐ったような臭いを発生させるのです。
以前の虫歯によって既に神経がなくなっている場合には、痛みがないため本人も虫歯に気付けません。その間にどんどん虫歯は進行してしまいます。そして本人が臭いに気付いて歯科を受診するときには、すでに抜歯が必要な状態になっていることも珍しくありません。
細菌が繁殖して出すガス
人の口内には、普段から億を超える数の細菌がいます。これら細菌は食べかすを餌として繁殖し、口臭の原因となるガスを排出します。
差し歯周辺は天然の歯に比べると凹凸があって掃除がしにくく、食べかすが残りやすい場所です。そこに細菌が集まってガスを出すため、差し歯周辺が臭いやすくなってしまいます。
歯の神経が死んでいる
何らかの原因で歯の神経が死んでしまった場合にも、腐ったような臭いが出てきます。
歯の神経をできるだけ生かすことが、歯にとっては非常に重要です。そのため以前の虫歯の治療で神経をギリギリで残していたり、治療の過程で神経のダメージが大きかったりした場合などは、差し歯をはめてから神経が死んでしまうケースがあります。
神経が死んだことで膿がたまる袋が出来て、膿を歯茎から出そうとするため、周辺がとても臭うのです。
進行した歯周病
差し歯や詰め物をした歯周辺が歯周病になった場合にも、強烈な臭いが発生します。
歯周病の怖いところは、被せているものがきれいな状態であってもそれと関係なくどんどん進行すること。歯周病が進行すれば、歯を支えている骨が溶けだしていずれ歯が抜けてしまいます。そして悪化すれば歯と歯茎の境目にある歯周ポケットから膿をだすため、そこが臭うようになります。
歯周病は日本人の成人の約8割がかかっているとされている国民病です。放置しても自然治癒はせずにどんどん骨を溶かすため、歯科で治療をしなければなりません。
副鼻腔炎
上顎の差し歯や銀歯などが虫歯になり、歯の根のところに細菌がたまると、構造上近いところにある鼻の管へと侵入します。その結果発生するのが副鼻腔炎です。
副鼻腔と呼ばれる細い管が細菌で炎症し、鼻づまりや顔面痛、頭痛、発熱などを引き起こします。アレルギーや風邪など鼻が原因で副鼻腔炎になるケースが一般的ですが、まれに歯が原因で発生することもあるため注意しましょう。
歯が原因で副鼻腔炎になる場合、原因である虫歯を治療しなければ、顔面中に及ぶ痛みはなくなりません。
【関連記事】虫歯が原因の副鼻腔炎についての記事はこちら
虫歯が原因で副鼻腔炎になる? 治療方法と予防方法
あなたの差し歯の匂いは大丈夫? セルフチェックリスト
「差し歯がドブ臭い」という口臭は、自分ではなかなか気づきにくいものです。しかし、気づかないうちに周囲の人々に不快感を与えているかもしれません。
ここでは、あなたの差し歯が臭っているかもしれないサインをチェックリストにまとめました。鏡の前でひとつずつ確認してみましょう。
- □差し歯の根元や歯と歯茎の境目が黒ずんでいる
- □差し歯を指や舌で触るとグラグラと揺れる感覚がある
- □差し歯の歯茎から血が出る、または腫れている
- □歯ブラシで磨いても、差し歯の周りにザラザラした感触が残る
- □差し歯を入れた部分の歯が痛む、または触ると違和感がある
- □以前より口の中がネバネバする、唾液が少ないと感じる
上記のチェックリストにひとつでも当てはまる項目があった方は、すでに差し歯がドブ臭くなる原因を抱えている可能性があります。
歯科で受けられる口臭検査
自分で臭いをチェックするのは限界があります。実際には「臭っているのか自分だけが気にしているのか」の判断がつきにくいものです。そんなときに役立つのが、歯科医院で行う口臭検査です。
代表的なものには、息に含まれるガスを数値化する「ハリメーター測定」や、唾液の中の細菌量や虫歯リスクを調べる「唾液検査」があります。これらを行うことで、口臭の原因が「差し歯の隙間や歯周病なのか」「全身的な原因があるのか」をはっきりさせられます。
検査は数分程度で終わる簡単なものが多く、歯科医院によっては保険診療の範囲内で受けられる場合もあります。セルフチェックで不安がある方は、歯科で一度検査を受けてみると安心ですよ。
差し歯のひどい匂いを放置するとどうなる?
差し歯辺りから嫌な匂いがしても、痛みがなければ「そのままでも大丈夫かな」と思ってしまう方は少なくありません。
しかし、最初に述べたように、臭いは口の中の異常を知らせるサインです。放置してしまうと、見た目や生活の質、さらには歯の寿命にまで大きな影響を与えることがあります。
口臭が強くなると人間関係に悪影響を及ぼす
差し歯の隙間に細菌が繁殖すると、独特のドブ臭や生臭さが強くなります。本人は慣れてしまって気づかないことも多いですが、周囲の人にははっきり伝わっているケースが少なくありません。
口臭は「デリケートな問題」で指摘されにくいため、気づかないうちに職場や家庭でマイナスの印象を与えてしまうこともあります。
歯ぐきや周囲の歯にもダメージが広がる
臭いの原因は細菌です。差し歯の周囲に汚れや炎症が広がると、歯ぐきの腫れや出血、歯周病の進行につながります。
さらに、細菌が多い状態を放置すると、差し歯だけでなく周りの健康な歯にもダメージを及ぼし、口全体の環境が悪化してしまいます。
治療が大がかりになるリスクが高まる
早期であれば差し歯のクリーニングや調整、交換だけで済むことが多いですが、放置すると内部で虫歯や炎症が進行し、根管治療・抜歯・ブリッジ・入れ歯・インプラントといった大掛かりな治療が必要になるケースもあります。
治療の負担が増えるだけでなく、時間も費用も大きくかかってしまうため、早めの受診が最終的に自分の歯とお金を守ることにつながります。
差し歯のドブ臭さを改善するには?
差し歯から匂う強烈な臭さを改善するために、できることをみていきましょう。以下の4つがその方法です。
- ・口内ケアの見直し
- ・差し歯の交換
- ・歯のトラブルの治療
- ・耳鼻咽喉科の受診
口内ケアの見直し
口内の細菌が歯の食べかすにとりついて繁殖し、ガスを出している場合、磨き残しをなくせば臭いは改善されます。
一般的な歯ブラシを使った歯磨きで落ちる汚れは、何と汚れ全体の6割程度。つまり自分では磨けているつもりでも、あと4割の汚れが残ったままなのです。
そのため、歯磨きでは歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなど補助アイテムも使ってください。
歯間の汚れを掻き出すアイテムを使えば、口内清掃率は約8割にまでアップします。歯磨きの後に洗口液で殺菌もしておけば、虫歯や歯周病といったトラブルも起きにくくなりますよ。
食後の口内ケアはとても大切ですが、最も大切なのは就寝前のケアです。寝る前の歯磨き・歯間ブラシ・デンタルフロスだけは忘れずに毎日取り組むようにしましょう。
差し歯の交換
差し歯が劣化して虫歯になってしまったケースでは、差し歯の交換が必要です。まずは虫歯の治療をし、その後、差し歯の交換となります。この際、劣化しにくい差し歯へ交換することも検討してみましょう。
歯のトラブルの治療
当然、歯にトラブルが起きていれば治療しなくてはなりません。虫歯や歯周病は自然治癒しないため、早めの対処が必要です。
歯の神経が死んでしまっている場合には根管治療を、歯の根の先に膿の袋が出来てしまっている場合には膿の排出治療を行います。歯科では最初の検査で何が原因かを探り、治療方法を説明してくれますよ。
耳鼻咽喉科の受診
副鼻腔炎の原因が歯にあり、鼻の炎症が歯痛などを引き起こしている場合もあります。まずは歯科を受診しますが、歯に悪いところがなければ耳鼻咽喉科を受診して治療をしてくださいね。
差し歯がにおわないようにするための方法は?
すでに差し歯を入れていれば、あとはそれを継続していかなければなりません。将来にわたって差し歯周辺が臭くならないようにできることで最も有効な手段は、「歯科の定期健診を受ける」です。
普段、正しい歯磨きを実践して口内ケアを行うことは大前提です。お口の中の掃除をしっかり行うことで、多くの口内トラブルは発生しなくなります。しかしそれにプラスして、さらに口内トラブルをいち早く発見するために、歯科の定期健診を受診しましょう。
歯茎の腫れや出血はないか、口臭はないか、歯の揺れはないかなど、プロがしっかり確認してくれます。病気や異常が見つかれば早期治療ができるため、定期健診は3カ月に1度、最低でも半年に1度は受けるようにしてください。
【関連記事】歯科の定期健診についての記事はこちら
歯の検診の頻度は3カ月に1回が推奨! その理由と検診内容や費用など
差し歯の寿命と交換のタイミング
差し歯の寿命は、使用する素材や日頃のケアによって大きく異なります。保険適用の差し歯は一般的に5〜7年ほどで劣化するといわれていますが、自費診療のセラミックなどの素材は10〜20年と長持ちする傾向にあります。
しかし、差し歯が寿命を迎える前に、以下のようなサインが見られたら、交換のタイミングかもしれません。
- ・差し歯と歯茎の間に隙間ができている
- ・差し歯の根元が黒く変色している
- ・差し歯がグラグラと揺れる
- ・差し歯の表面にツヤがなくなり、着色汚れが目立つ
- ・歯茎が腫れる、出血する
- ・差し歯が欠けたり、割れたりしている
これらのサインは差し歯が劣化しているだけでなく、内部で虫歯や歯周病が進行している可能性を示しています。
劣化した差し歯を交換するメリット
劣化した差し歯を交換すると、以下のメリットがあります。
メリット | 具体的な内容 |
---|---|
見た目の改善 | 変色・黒ずみをリセットできる |
清掃性アップ | 新しい差し歯は適合が良く、汚れが溜まりにくい |
口臭予防 | 隙間の細菌トラブルを減らせる |
健康な歯を守れる | 早めに交換すれば再治療も最小限で済む |
差し歯の交換におすすめの素材
一度治療した歯を長く健康に保つには、劣化しにくい素材への交換が非常に有効です。
おすすめはセラミックやジルコニアといった素材です。セラミック素材は時間が経っても変色しにくく、表面が滑らかで汚れが付きにくいため、虫歯や歯周病のリスクを減らせます。また、残っている歯にぴったりと密着するため、細菌の侵入を防ぎ、根本的な匂いの予防も可能です。
【関連記事】差し歯治療におすすめのオールセラミック素材についての記事はこちら
差し歯治療におすすめなのは? 保険治療のプラスチックと自費治療のセラミック
差し歯の匂いに関するQ&A
差し歯のドブ臭い匂いについて、代表的な質問とその回答を紹介します。
Q1. 差し歯の匂いを自分で応急処置する方法はありますか?
A:差し歯の匂いの原因は、差し歯の下にできた虫歯や歯周病など、歯科医院での治療が必要な場合がほとんどです。ご自宅での応急処置では根本的な解決にはなりません。歯科医院を受診して、原因を特定し、適切な治療を受けることが最も重要です。
Q2. 差し歯のドブ臭い匂いは、どんな人に多いですか?
A.:差し歯の匂いは、以下のような方がなりやすい傾向にあります。
日頃の歯磨きが不十分な方・歯ぎしりや食いしばりの癖がある方・ドライマウスの方・差し歯を長期間使用している方などです。
Q3. 差し歯の匂いを防ぐにはどうしたら良いですか?
A.:差し歯の匂いを防ぐためには、毎日の丁寧なセルフケアが不可欠です。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して、差し歯の周りの汚れをしっかりと取り除きましょう。
また、歯科医院での定期的なメンテナンスも重要です。専門的なクリーニングや、差し歯の状態チェックを定期的に行うことで、トラブルの早期発見・早期治療につながります。
Q4. 差し歯の匂いはマスクで隠せますか?
A.:マスクをすることで、一時的に口臭が漏れるのを防ぐことはできます。しかし、マスクは口臭の原因そのものを解決するわけではありません。
むしろ、マスクを長時間着用することで口内が乾燥し、唾液の分泌が減ってしまうことがあります。唾液には口の中の細菌を洗い流す自浄作用があるため、唾液が減ると細菌が繁殖しやすくなり、かえって匂いが強くなることも考えられます。
差し歯の匂いは、根本的な原因を治療しなければ解決しません。マスクはあくまで一時的な対策と捉え、まずは歯科医院を受診して原因を突き止めることが大切です。
差し歯のドブ臭さをなくしたいなら歯科を受診! トラブルを解決しよう
差し歯あたりが何だか臭い……それも強烈な臭いがすると悩んでいる方は、とにかく歯科を受診しましょう。差し歯を入れている歯が虫歯や歯周病にかかっている可能性があります。
口内は細菌に溢れており、対応が遅れるとその細菌は歯の下にある血管から入り込んで全身に影響を及ぼしだすことも。心臓病などの、他の大きな病気を誘発する可能性があるため、できるだけ口内を清潔に保つよう努力が必要です。
面倒くさいからと放置せず必ず時間を作って歯科を受診し、早期に治療するようにしましょう。