歯医者の予防歯科とは? 歯の健康に予防歯科が不可欠な理由
この度の新型コロナウィルスに罹患された方々、並びに感染拡大による影響を受けている方々に、心よりお見舞い申し上げます。当院では患者さまとスタッフの安全確保を実施しています。
<当院の感染拡大防止について>
- 手洗い・アルコール消毒・うがいの徹底
- ドアの開放、空調を強めに設定する 等、定期的に室内換気を行っております
- 次亜塩素酸水を使用し、空間除菌を行っております
- 感染リスクの高い来院者さまへの受診の自粛のご依頼、又はご予約日の変更のお願いをしております
ご理解とご協力賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
健康を保つための「予防」に対する意識が少しずつ変わってきたように感じます。予防歯科の大切さをPRするCMを目にする機会も増えました。予防歯科を特に大切に考えている当院としては嬉しい変化です。
本記事では予防を特に大切に考えている当院が、予防歯科について深堀りさせていただきます。
予防歯科とは?
予防歯科は「歯が悪くなる前に防ごう」という考え方です。
最近話題になっていたこちらのツイートはご存知でしょうか?
歯の資産価値は約3,000万円で、しかも
歯が無いと医療費は2,000万円多くかかるのね。フロスと定期的な歯のクリーニングするだけで5,000万円の価値を維持できる。ということは1年間に2〜3万円歯に投資するだけで、年間100万円のリターンがあるということ。若い人は今のうちから歯に投資するのは賢い選択— myデンティスト@癒える力 (@ZnDtke) May 16, 2020
予防歯科の大切さを資産価値に置き換えて分かりやすく伝えてくれてますね。
「天然の歯はかけがえのないものです」「歯を失わないよう大切にしましょう」と言われても、当たり前のこと過ぎて危機感も湧かなければ、行動に移そうとも思わないものです。ですが、ツイートのように定量的に表されると非常に興味深く感じますよね。歯を守ることには1000万単位の価値があるとのこと。
では、3000万円相当の価値があるご自身の大切な歯を失わないためにはどうすればいいのか? その答えが「予防歯科」なのです。
病院やクリニックのような医療機関は「不調を感じたら行く所」「悪いところを治すために行く所」というイメージがあると思います。ですが、医療機関の果たす役割は悪いところを治すだけではありません。悪くならないようにする予防も医療に含まれています。
医療の目的は「健康の維持と増進」です。健康の定義は難しいですが、私としては「真の健康とは不調が何もない状態」だと考えています。
歯科で言うと、虫歯や歯周病になっている状態を健康とは呼べません。
なぜなら、虫歯や歯周病が自然に治ることはないので、歯科医院での治療が必要になるからです。イメージとしては、体調が悪すぎて病院へ行かなくてはならない状態と一緒ですね。
私たちは患者さまの不調が何もない状態を目指して治療にあたりますが、最も理想的な治療法は不調を未然に防ぐことです。症状が進行してから処置するのではなく、進行しないように処置する予防歯科の大切さが徐々に浸透してきました。
患者さまが日常的におこなうセルフケアと、歯医者でおこなうプロケアで、お口の健康を保っていくことを予防歯科といいます。
ちなみに「予防歯科」という呼称は医療法で定められている診療科目ではありません。予防歯科という言葉自体がポピュラーになってきたので、便宜的に使っているようなイメージです。
予防歯科が特に大切な理由
例えば、あなたも風邪の諸症状があって病院へ行った経験はあると思います。熱が上がったり、咳や鼻水が出たり、関節が痛くなったり。風邪の場合、不調を知らせるサインが分かりやすい形で現れます。
では「歯」の場合を考えてみましょう。
歯科の二大疾患「歯周病」と「虫歯」は自覚症状を感じにくい病気です。初期段階ではほとんど症状が現れません。虫歯や歯周病になっていても「痛くない」「違和感はない」「生活に支障がない」といった状態なのです。風邪のように症状がなければ、歯医者へ行く必要性を感じないかもしれません。
しかし、症状の有無に関わらず実際には病気を患っているわけです。歯科医院で治療しなければ治らない病気なので、放置に伴いどんどん悪化していきます。「症状がない=必ずしも健康とは言えない」ということです。歯の病気は、風邪や腹痛や頭痛のように、すぐには症状が現れないという特徴を覚えておいていただきたいと思います。
虫歯や歯周病には進行具合があります。痛みがあれば歯科医院へ行こうと思うきっかけになるのかもしれませんが、初期段階ではほとんど自覚症状がありません。そのことを理解して気をつけても、ご自身で「これは虫歯だ」「歯肉炎っぽいな」と判断することは難しいでしょう。やはり、プロの目による診察が必要です。
歯医者で行なう予防歯科には、お口の状態を定期的にチェックして、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療を果たす機能があります。自覚症状がないからといって「自分は健康だ」と思い込んでいると、発見が遅れて大掛かりな治療をしなければいけなくなることもあります。プロの力を借りながら予防に取り組んでいくことが大切です。
予防歯科を怠るとどうなるのか?
歯周病を例に挙げてみますね。
日本人の約8割が歯周病と言われ、歯を失う原因第一位とされている病気です。また、単に歯を失うだけにとどまらず、他の病気(心疾患、脳血管疾患、糖尿病、早産など)へ影響を及ぼすことも分かっています。
そんな恐ろしいリスクのある歯周病ですが、適切なセルフケアで予防・治療できる病気でもあります。食後はしっかり歯ブラシをする、フロスを使うといったケアが大切です。
「それならば歯医者に行かなくても、セルフケアを頑張ればいいのでは?」と思うのは早計です。セルフケアだけでは不十分な理由と、プロケアがもたらす効果について見てみたいと思います。
セルフケアでは歯周病菌を取り除けない
自分ではしっかりと磨いているつもりでも、磨き方が雑だったり、歯の重なった細かい部分などを上手に磨けていないと歯垢(プラーク)が残ります。歯垢はやがて歯ブラシでは除去できない歯石になります。歯石は細菌の温床となっていて、除去しない限り歯周病を進行させる毒素を出し続けます。
細菌は酸素が苦手で、歯周ポケットの奥深くに潜みます。極細毛の歯ブラシでも歯周ポケットの奥深くまでは到達できないため、歯ブラシで歯周病菌を完全に除去することはできません。そのため、特に不調を感じなかったとしても歯医者で行なう予防歯科が必要となるわけです。
歯を高い確率で守れるプロケア(定期検診)
日本人で80歳になって残っている歯の平均本数は12本です。予防歯科の先進国スウェーデンでは平均20本。歯科医療費が日本の10倍にも上るアメリカでは平均17本と言われています。
この違いを生む理由は何かというと、定期検診の受診率にあります。国を挙げて予防歯科に力を入れているスウェーデンでは、定期検診受診率は全国民の80%を超えているのに対し、日本では10%未満なのです。
では、定期検診を受診すればどれだけ歯を守ることにつながるのかを見てみましょう。
出典:長崎大学 新城教授のデータ
定期検診を受診している方は、圧倒的に残存歯数が多いことが分かります。やっぱり、不調がある時にだけ受診しても、ブラッシング指導を受けてもダメなのです。
ちなみに、若い世代の方にとっても関係のない話ではありません。20代で歯を失う方も実際に存在しています。
大掛かりな治療で苦しまないためにも、歯を失わないためにも「自分は大丈夫」とは思わずに、不調を感じなくても定期検診の受診をおすすめします。
予防歯科の実践! セルフケアとプロケアを上手に使う
予防歯科はセルフケアだけでは不十分ですし、定期検診の受診だけで成り立つものではありません。ご自身の状態を知って、適切なセルフケアを行う。そして、セルフケアでは出来ない歯石の除去や、歯の変化を定期的にチェックすることで、健康な歯を保っていきましょう。
セルフケアのポイント
歯磨きの目的は歯垢を取り除くことです。磨き残しがないように、時間をかけて丁寧に磨くよう心がけましょう。
歯ブラシのほかに、デンタルフロスや歯間ブラシといった歯間清掃用具も効果的です。歯ブラシとフロスの併用で、歯垢の除去率は30%アップします。
<歯ブラシの磨き方>
- ・磨き忘れがないように、順番を決めて磨く
- ・毛先を歯の表面、歯と歯肉の境目にきちんとあてる
- ・歯に当てたときに毛先が広がらない程度の力を心がける
- ・かみ合わせ、歯と歯の間、歯の裏側、歯と歯肉の境目を意識する
- ・ご自身にあった歯ブラシを選ぶ(※)
- ・ご自身の歯並びにあった磨き方を理解する(※)
※歯医者さんへ行った際に相談するといいです。
プロケアのポイント
しばらく歯医者に足を運んでいない方は是非とも時間を作っていただき、早めの受診をおすすめします。患者さまの状態に合わせた治療計画に沿って、歯科医院と二人三脚で歯を健康な状態に近づけていきましょう。
<歯科医院での予防歯科>
- ・早期発見・早期治療に役立てる定期検診(メンテナンス)
- ・歯垢や歯石を除去するスケーリング
- ・美しくツヤのある歯に仕上げるポリッシングブラシでの研磨
- ・むし歯になりにくくするフッ素の塗布
- ・患者さまのお口にあったブラッシング指導
歯の健康は予防歯科なしでは実現できません
予防歯科の大切さについてお伝えいたしました。
「歯医者さん」というと、治療が前提のようでどこか違和感を覚えます。たしかに私たち歯医者は、痛みや不調といった「悩み」を解決するための治療を行います。ですが「悩み」を抱く前の段階(=予防)で解決できるなら、それが最善ではないでしょうか。
治療して当たり前ではなく、治療しなくてもいい状態を保ち続けられること。「歯科医院」という場所は、歯科医師ではなく、歯科衛生士が主役であって欲しいと私は思っています。予防歯科のメインは衛生士です。
医院やクリニックというよりも、ある意味「健康と美しさを保つための場所」「日常に溶け込んだ当たり前の場所」といったイメージで気楽に通ってもらいたいと考えています。
むし歯や歯周病にならないための予防意識が、もっと多くの方に行き渡るよう当院も務めていきたいと思っています。