親知らず抜歯後の「完治」までを解説! 早く治すための正しいセルフケアとは

こんにちは、秋田のハピネス歯科クリニック 大久保です。
抜歯は誰にとっても怖いもの。特に大きな穴が開く親知らずの抜歯は、抜いたあとのことを考えて不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。
他の歯を抜いたあとは、噛む機能を回復させるため、差し歯や入れ歯、インプラントなどが入ります。しかし親知らずは抜いたらそれで終わり。抜いたあとにできた穴はどのくらいで塞がれるのか、気になりますよね。
ここでは親知らずの抜歯前の注意、抜歯後と完治までにかかる流れや時間、注意すべきこと、正しいセルフケアなどについて紹介します。
親知らずの完治までは約1カ月から半年! 焦らず慎重にケアしよう
親知らずを抜歯すると、完治までには時間がかかります。人や抜歯の状態によっても違いますが、早ければ1カ月半、遅ければ半年程度です。
その間も当然食事はしますし、日々の歯磨きなどもありますよね。穴がふさがれていない状態での食事や歯磨きなどを心配するのは当然です。
結論としては、焦っても仕方ないので、注意事項を守りながら慎重にケアしていくしかありません。問題があれば担当の歯科医にすぐ相談すると決めて、ゆっくりと傷を治していきましょう。
そもそもなぜ親知らずを抜歯する必要があるのかについては、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】親知らずを抜くべきかどうかのケース別紹介についての記事はこちら
親知らずは抜くべき? 抜いた方がよいケースと抜かない方がよいケースを紹介
そもそも「完治」とはどのような状態を指す?
親知らずの抜歯後の「完治」と聞くと、「穴が完全に塞がって、何を食べても気にしなくて良い状態」をイメージされる方が多いでしょう。
歯科医療において、親知らずの抜歯後の経過は主に以下の二段階に分けて考えられます。
- ・穴に塞がる
- ・骨が完全に再生する
「穴が塞がって痛みがなくなる(約1カ月)」ことと、「骨が元通りになる(約3カ月〜半年)」ことには大きな差があります。自己判断でケアをやめてしまわないようにしてください。
では、2つの段階を確認しましょう。
第一段階:穴が塞がる(傷口が治癒する)
これは、抜歯によってできた歯茎の表面的な傷が治癒する段階で、約1週間〜1カ月程度です。
抜歯窩(ばっしか:穴)を覆っていた血餅(けっぺい)が、肉芽組織(にくげそしき)と呼ばれる柔らかい組織に変化し、さらに上皮(歯茎の皮膚)で覆われます。
この段階を終えると、穴に食べ物が詰まる感覚や、触れると痛みを感じることは少なくなります。食事や歯磨きの制限が緩和され、日常生活において「治った」と感じ始める時期です。
第二段階:骨が完全に再生する(組織が完治する)
これは、抜歯によって失われた顎の骨が内部で完全に修復される段階です。約3カ月〜半年程度を指します。
穴の内部で骨芽細胞が働き、肉芽組織が徐々に新しい骨へと置き換わっていきつつある状態です。この骨の再生が完了して初めて、組織が元通りになった「完全な完治」と見なされます。
表面上は穴が塞がっていても、骨の再生には時間がかかります。骨が完全に再生する前に強い負荷をかけたり、炎症が起きたりすると治癒が遅れる原因となります。歯科医院では、この骨の回復状況を確認するために、定期的にレントゲン検査を行うことがあります。
親知らず抜歯の治療から完治までの流れ

では、親知らずの抜歯が決まってから治療を開始し、完治するまでの流れについてみていきましょう。
- ・治療開始前
- ・抜歯後当日
- ・抜歯後約4日
- ・抜歯後約1週間
- ・抜歯後約1カ月
- ・抜歯後約3カ月
治療開始
どの歯であっても、抜歯には痛みが伴います。抜歯そのものは麻酔をかけるため痛みは感じませんが、麻酔が切れたあとに強く痛む方もいるのですね。
その痛みをより少なくするため、抜歯前には以下2つのことに気を付けておきましょう。
【口の中を清潔にする】
人の口内には常時億を超える細菌がいます。この細菌が抜歯の傷口に入り込んで炎症を起こさないように、あらかじめ少しでも数を減らしておくことが大切です。
術後の腫れを減らすために、歯磨きはしっかりしておきましょう。歯ブラシで磨いたあとはデンタルフロスや歯間ブラシ、マウスウォッシュを使ってより丁寧にケアしてくださいね。
歯磨きをしっかりすれば、歯茎に適度な刺激が与えられて歯茎が引き締まります。傷の治りが早くなりますよ。
【寝不足は解消しておく】
寝不足になると人は抵抗力・免疫力が低下します。そうすると傷口から入った細菌との戦いに負け、術後の腫れが酷くなるかもしれません。
抜歯前には疲れを残していないように、しっかり睡眠を取っておきましょう。
抜歯後当日
麻酔をかけて抜歯します。
抜歯すると、歯茎にできた穴は血液で充満します。血液には傷ついた組織を修復する材料がたくさん入っており、細菌感染を防ぐ役割も持っています。
抜歯後約1時間で作られるのが血餅(けっぺい)と呼ばれる血の塊。これがかさぶたの役割を果たします。
ただし、血餅はあくまでも少し固まりかけた血液。そのため穴を清潔にしようとうがいなどをすると、簡単に取れてしまいます。術後は気になっても口を強くゆすがないようにしましょう。
抜歯後約4日
術後3〜4日程度で、穴の周辺の歯茎から再生が始まります。
しかしまだ穴はふさがっていないため、気になるからと舌や歯ブラシで触らないようにしてくださいね。
抜歯後約1週間
1週間経つと、血栓(血で穴をふさいでいた)が肉芽組織(にくげそしき)へと変化。肉芽組織は血餅よりも丈夫なもので、簡単には取れない「蓋」です。
肉芽組織ができるまでの1週間は、傷口をできるだけ刺激しないように安静に過ごしましょう。
抜歯後約1カ月
1カ月経つと、肉芽組織が変化して骨へと変わり出します。こうなると歯茎が硬い骨で覆われ、食事のときの食べかすが穴に詰まることもなくなるでしょう。
ただし、この時点ではまだ「穴が開いている感覚」があるという方もたくさんいます。
抜歯後約3カ月
抜歯後3カ月が経つと、骨や歯茎が完全に回復し、穴は埋まります。進行した歯周病がない方であれば、緩やかな起伏を持つ歯茎になっているはずです。
親知らずが難症例の場合は役半年かかる
親知らずが斜めに生えておらず、歯周病や虫歯などのトラブルもない人であれば、歯茎の切開を行わないため約1カ月で完治します。
しかし親知らずは多くの場合、斜めに生えたり埋没していたり、歯周病・虫歯などのトラブルを起こしているもの。その場合には、人によって完治は約3カ月から半年程度かかるのですね。
特に進行した歯周病にかかっている方であれば、歯周ポケットは相当深くなっているはずです。歯を支えている骨も溶けてしまっている恐れがあり、回復には相当な時間がかかります。
ただ単純な抜歯が難しい方は、歯茎を切開したり骨を削ったりするケースも。穴が大きいため、回復までの時間とともに治療費もかかります。
親知らず抜歯後の完治を遅らせる症状とその対処法

抜歯後に「これは異常?」と感じる症状は、多くの方が経験する不安の種です。ここでは、抜歯後の正常な経過と、完治を遅らせたり、再診が必要になったりする症状、そしてその対処法をみていきましょう。
ドライソケット
抜歯後の穴(ソケット)にできる血の塊が失われ、骨がむき出しになってしまう状態です。抜歯後2〜3日目以降に強い痛みが出てくる場合は、この可能性が高くなります。
- 【症状の特徴】
- ・ズキズキした強い痛みが長く続く
- ・鎮痛薬が効きにくい
- ・口臭が強くなることがある
- 【対処法】
- ・自分で触ったり、うがいを強くしない
- ・早めに歯科を受診する(洗浄・薬剤保護などが必要)
- ・刺激の強い飲食・喫煙は控える
ドライソケットはセルフケアでは治せません。違和感がある時は放置しないようにしましょう。
腫れが長引く・熱っぽさが出てくる
抜歯後の腫れは、体組織が傷を治そうとする正常な防御反応です。しかし、その経過や熱の出方によっては注意が必要です。
【腫れの正常な経過と注意点】
腫れは通常、抜歯の翌日〜2日目にピークを迎え、その後は徐々に引いていきます。
1週間以上経っても腫れが引かない、または一度引いた腫れが再び強くなった場合は、細菌による感染症の可能性があります。
【熱っぽさ】
抜歯当日に微熱(37℃台)が出ることは、手術のストレスなどによる正常な反応です。
もしも高熱(38℃以上)が続く場合や、数日経ってから発熱した場合は、傷口の感染や体の抵抗力低下によるものかもしれません。
口が開きにくい
抜歯後に口が開きにくくなる(開口障害)のは、周囲の筋肉や顎関節に負担がかかったためによく起こる症状です。
- 【特徴】
- ・痛みで口が開けづらい
- ・食事がしにくい
- ・少しずつなら開くが、大きく開けると痛む
- 【対処法】
- ・温めると筋肉がゆるんで開きやすくなる
- ・無理に口を大きく開けようとしない
- ・1週間たっても改善が乏しい場合は受診を
片側の親知らずを抜歯した場合、偏った咀嚼で筋肉が緊張していることもあります。
しびれが続く
下の親知らずを抜いた際、ときどき下唇や顎にしびれが残ることがあります。ほとんどは一時的なものですが、神経に近い位置だった場合は注意が必要です。
- 【しびれの特徴】
- ・麻酔が切れても違和感が残る
- ・表面の感覚が鈍い
- ・時間とともに軽くなっていく
- 【対処法】
- ・マッサージは自己判断で行わない
- ・しびれが徐々に改善していれば経過観察でOK
- ・1週間以上たっても変化がない場合は歯科に相談
早い段階で診てもらうほど、適切なケアにつながります。
症状が続くようなら再診しよう
抜歯後の治療は、歯科医院での処置だけでなく、ご自宅での安静と適切なセルフケアがあって初めてスムーズに進みます。
痛み止めが効かない激痛、高熱、1週間以上続く腫れなど、ご自身で「何かおかしい」と感じる症状がある場合は、自己判断せずにすぐにご連絡ください。
完治を早めよう!抜歯後の正しいセルフケア

抜歯後の治癒のスピードは、ご自宅でのセルフケアに大きく左右されます。ここでは、傷口を守り、完治を早めるための具体的なセルフケアの方法を説明します。
口腔ケア(いつから歯磨きしてOKか)
「傷口に触れてはいけない」という意識から、抜歯後、口の中を清潔に保てなくなる方がいます。しかし、口腔内を清潔に保つことは、感染を防ぎ治癒を早めるために非常に重要です。
抜歯した部位以外は、抜歯直後から普段通りに磨いてください。
抜歯した部位周辺においては、抜歯後24時間程度は傷口を避けて周囲の歯を優しく磨きましょう。
抜歯した穴の周囲は、毛先を傷口に向けず、優しく撫でるようにブラッシングします。傷口付近の歯茎を絶対に傷つけないよう注意してください。
【食べ物が詰まった時の対処】
抜歯後の穴に食べ物が詰まっても、舌や指、歯間ブラシ、つまようじなどで無理に取り出そうとしないでください。これらはすべて、血餅を剥がす原因(ドライソケットの原因)となります。
穴付近の食べ物が気になる場合は、水を軽く含んで静かに傾けて吐き出す程度の、ソフトなうがいに留めましょう。
食事サポート
抜歯直後の食事は、傷口を刺激せず、かつ治りを早くするために栄養を補給できるメニューを選ぶことが大切です。
以下の表を参考にしてください。
| 時期 | メニュー例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 抜歯当日〜翌日 | ヨーグルト、プリン、ゼリー、冷めたおかゆ、スープ、豆腐など。 | ・熱いもの、刺激物、硬いものは避ける。 ・ 抜歯していない側で噛む。 |
| 抜歯後2日目〜1週間 | 柔らかい麺類(うどん)、煮魚、スクランブルエッグ、ポテトサラダなど。 | 傷口に詰まりやすい粒状のもの(ゴマ、ナッツなど)や、刺激の強い香辛料は避ける。 |
| 1週間以降 | 徐々に通常の食事に戻してOK | 骨の再生は続いているため、無理のない範囲で硬いものを摂取する。 |
睡眠・免疫ケア
体の回復力(免疫力)を高めることは、傷の治りを早める最も基本的な方法です。
睡眠不足は免疫力を著しく低下させます。その結果、体の細菌と戦う力が弱まり、抜歯後の傷口が感染しやすくなったり、ストレスホルモンが増えて腫れや痛みが長引いたりする原因になります。
粘膜の修復に必要なホルモンが分泌されにくくもなってしまうため、睡眠は十分にとるようにしましょう。
患部や体を冷やす/温めるのタイミング
腫れに対して「冷やす」ことは一般的ですが、冷やす時期と目的を間違えると、かえって治癒を遅らせることがあります。
炎症を抑えるため、冷却は48時間までにしましょう。
氷や保冷剤を直接肌に当てるのではなく、タオルなどで包んで優しく頬の外側から当ててください。冷やしすぎると血行が悪くなり、治癒を妨げます。
そして腫れのピーク(48時間後)を過ぎたら、逆に血行を良くして、傷の治癒に必要な酸素や栄養を運ぶことが重要です。
患部を温かいタオルで包んだり、熱すぎない程度のお風呂に入ったりすることで血行が良くなり、傷の回復を早められますよ。
親知らず抜歯後に守るべきこと5つ

抜歯が完了してから完治までの間には、本人が気を付けて守るべきことがあります。以下の5つの項目は、注意して守るようにしましょう。
- ・抜歯当日と服薬中は禁酒する
- ・激しい運動とお風呂は2~3日控える
- ・抜歯後1週間は禁煙
- ・歯ブラシや舌で患部に触らない
- ・うがいを控える
- ・硬いものや刺激物は食べない
抜歯当日と服薬中は禁酒する
抜歯当日と服薬中は、お酒を控えましょう。
お酒を飲むと血流が良くなるため出血がひどくなります。
また、痛み止めはアルコールとの併用は厳禁です。人によっては蕁麻疹がでるなどの強い反応があるので、お酒は絶対に飲まないようにしてください。
激しい運動とお風呂は2~3日控える
激しい運動や入浴によって血液の循環が良くなります。その結果、血が止まりにくくなるうえ、痛みも増してしまうことに。術後2、3日はあまり活発な活動はせず、安静にしてお過ごしください。
抜歯当日の入浴は禁止。2日程度はシャワーで済ませましょう。
抜歯後1週間は禁煙
歯茎が回復するためには血液が必要です。しかしタバコを吸うと、血管が収縮するため栄養や酸素が歯茎に行き渡らず、完治が遅くなってしまいます。
1週間程度はできるだけ節煙、禁煙するようにしてください。
歯ブラシや舌で患部に触らない
再度確認していただきたいのですが、抜歯によってできた穴を歯ブラシや舌で触らないようにしましょう。
抜歯後に縫う場合は、糸でゆるく縫うのが一般的です。歯ブラシや舌が糸に触れると取れてしまい、完治が遅くなるため気を付けてくださいね。
うがいを控える
患部が気になるうえに血の味がするため、ついついうがいをしたくなりますが、前述したように、かさぶた代わりの血餅はすぐに取れてしまいます。
血餅が取れると激痛が発生しますので、強くうがいをしないようにしましょう。
硬いものや刺激物は食べない
「食事サポート」のところでも触れましたが、しっかり噛まないと食べられないものや、香辛料をたくさん使った料理などは傷口の刺激になります。できる限り避けましょう。
目安は約1週間です。それ以降は丈夫な蓋ができているため、気にせずに食事ができるようになります。
親知らずの抜歯をすすめる理由3つ
本来なら歯はできるだけ抜かないようにするのですが、親知らずだけはそうとは限りません。その代表的な理由は3つあります。
- ・トラブルが起きやすいから
- ・歯並びに悪影響があるから
- ・顎の骨折原因になり得るから
【関連記事】親知らずを抜歯する影響、メリットとデメリットについての記事はこちら
親知らずの抜歯がもたらす影響とは? リスクとメリットを解説
トラブルが起きやすいから
親知らずは一番奥に生えてくる歯。それまでなかった存在のため歯ブラシで磨くことを忘れやすく、また、真っ直ぐに生えることが少ないためきちんと清掃できません。
その結果、虫歯や歯周病などのトラブルが起きやすくなります。
歯周病が悪化すれば骨が溶けるため、周辺の歯にも影響が大きいもの。また歯周病や虫歯になると、きつい口臭が発生します。
歯並びに悪影響があるから
親知らずは上下ともにまっすぐ生えてくるわけではありません。生える時期も違います。
そのため、噛み合わせが変化してしまう恐れがあるのですね。
上下でかみ合わせる歯がない場合、歯はだんだんと伸び、歯肉を傷付けたりアゴの運動に悪影響を及ぼしたりします。
顎の骨折原因になり得るから
親知らずが深く根を張っている場合、外から強い力が加わると、アゴが骨折する恐れがあります。
親知らず抜歯の完治には時間が必要と知っておこう
親知らずを抜歯すると、完治までは大体3カ月程度かかります。人によって違いますが、多くの場合は何らかのトラブルが発生して抜歯となるため、完治までに時間がかかると覚えておいてくださいね。
毎日のケアで口の中を観察しましょう。
何のトラブルもない場合、抜歯せず経過観察となることもあります。親知らずが生えてきたなとわかったら、歯科で相談することがおすすめですよ。







