寝る時のマウスピースで歯と顎を守ろう! 種類・メリットとデメリット・ケア方法まで解説
こんにちは、秋田のハピネス歯科クリニック 大久保です。
朝起きた時に顎が疲れている、ちょっと集中したあとに歯が痛い、虫歯ではないのに歯が痛む……。そのような悩みがある方は「歯ぎしり・食いしばり」を疑いましょう。
歯ぎしりや食いしばりは、放置していると歯が欠けたり顎の病気になったりと、さまざまな悪影響を引き起こす動作。有効とされているのは、寝てる間に口にはめるマウスピースです。
今回は、寝る時のマウスピースが有効な理由、マウスピースのメリットとデメリット、種類や費用などについて紹介していきます。
寝る時にはマウスピースが効果的! 歯や顎を保護しよう
歯ぎしりや食いしばりをする方は、寝る時にマウスピースをはめると症状が軽減されます。
歯ぎしりや食いしばりは、ストレスなどが原因で強く歯と歯をすり合わせたり噛み合わせたりすること。非常に強い力が歯や顎にかかるため、さまざまな不快症状を引き起こします。
ちなみに、歯ぎしりや食いしばりは起きているときにもやっていることですが、寝ている間の歯ぎしりや食いしばりは、起きているときの何倍もの力になると言われています。
たとえば、日中の食事で食べ物を噛む力は自分の体重くらい(約40〜60㎏)であるのに対し、睡眠中になるとその2〜5倍、最大で500㎏以上もの力がかかるという研究結果もあります。
そのため、ストレスや噛み合わせの悪さなど根本的な原因に対応するのはもちろんのこと、まずは睡眠中にかかる強い力から歯や顎を守らなくてはなりません。そこで活躍するのがマウスピースです。特に意識がない寝ている間の歯ぎしりや食いしばりから自分を守るため、早めに手に入れて装着しましょう。
マウスピースやナイトガードとは?種類は6つ
ではまず、マウスピースやナイトガードと呼ばれる製品についてみていきましょう。
マウスピースやナイトガードは一般的には同じもので、口の中に装着して歯や舌、顎などを守ります。形状は似ていても柔らかいものや硬いものがあり、効果は種類によって大きく異なります。
種類は以下の6つです。それぞれの症状に合わせて使用します。
- ・ナイトガード・・・睡眠時に使用する歯ぎしり対策
- ・顎(がく)関節スプリント・・・顎関節症などを持つ方むけ
- ・スリープスプリント・・・いびきの軽減のために使用
- ・スポーツマウスピース・・・スポーツ時の顎部保護のために使用(主に日中に使う)
- ・矯正用マウスピース・・・歯科矯正で使用(日中も使う)
- ・保定用マウスピース・・・矯正終了後に後戻り防止で使用(日中も使う)
このうち、今回説明する「寝る時に使用して歯ぎしりから口内を守る」タイプはナイトガードと呼ばれるものです。同じく睡眠時に装着するマウスピースには顎関節スプリントやスリープスプリントがありますが、これらはナイトガードとは目的も効果も異なります。
症状に合わせたマウスピースをはめないと、逆に症状を悪化させてしまうこともあります。マウスピースをはめたら顎や歯の痛みがひどくなったという方は、そもそも目的が違うマウスピースをしている可能性が大きいと言えるでしょう。すみやかに担当の歯科医に相談するようにしてくださいね。
【関連記事】睡眠時の歯ぎしりについての記事はこちら
睡眠中の歯ぎしりは健康リスク大! すぐに取り組みたい歯ぎしり対策3選
マウスピースには市販製と歯科製がある
街中のドラッグストアやインターネットのショップでも、マウスピースは販売されています。ただし、市販のマウスピースは個人に合わせて作られたものではないため、自分の口内にフィットする可能性が少なく、返って症状を悪化させてしまうことがあります。
一方、歯科で作成されるマウスピースはあなたの歯型を取って、担当歯科医が削ったり表面を磨いたりして違和感がないように作ってくれるものです。
歯や顎、そして結果的に全身に与える影響を考えると、マウスピースは歯科で自分の症状に合わせた専用のものを作ってもらうことがおすすめです。
寝る時にマウスピースを使う5つのメリット
歯ぎしりや食いしばりは、歯同士をこすり合わせたり噛みしめたりする行為を指します。歯と歯がくっつく時に強い力が生まれるために問題が起こるのですね。
マウスピースは歯と歯の間に挟まれ、歯同士が直接影響しないようにできる製品です。物理的に歯ぎしりや食いしばりの邪魔をして、不快な諸症状が起きないようにします。
では、マウスピースをつけると効果的な理由、以下5つのメリットについて見ていきましょう。
- ・歯のすり減り防止
- ・歯ぎしりの力を分散
- ・歯の位置の改善
- ・顎関節を負担から守る
- ・治療済みの歯や詰め物を守る
歯のすり減り防止
マウスピースを歯にはめることで、歯ぎしりや食いしばりによる歯のすり減りを防止します。
歯ぎしりや食いしばりで歯にかかる負荷は自分の体重の2〜5倍と言われています。凄まじい力が歯にかかるので、毎日繰り返されると歯は段々削れ、欠けていきます。
しかしマウスピースをしていれば、本来なら歯が削れていくところを身代わりになってくれます。
マウスピースが少しずつ削れていくことが確認できれば、歯ぎしりや食いしばりの自覚がない方でも客観的な証拠として確認でき、治療の必要性を認識するきっかけになります。
歯ぎしりの力を分散
歯ぎしりはどうしても食いしばりやすい奥歯に集中しますが、マウスピースをはめるとその力を歯列全体に分散できます。
1本の歯にかかる負担を和らげることができるため、歯が折れたり欠けたりする可能性が減ります。
歯の位置の改善
歯ぎしりや食いしばりの原因の1つには、噛み合わせの不具合があります。噛み合わせが良くないと、食事がしにくいというだけでなく、時間の経過とともに全身の歪みにまでつながってしまいます。歪みが悪化すれば顎の不調や頭痛、肩こりなどつらい症状が次々とでてくるため、矯正をすすめられることになるのです。
マウスピースはその人が持つ本来の噛み合わせになるように調節できます。毎日睡眠時につけると長時間矯正していることと同様になり、噛み合わせの微妙なズレの改善が期待できます。
顎関節を負担から守る
強い力で噛みしめると悪影響があるのは、歯と歯茎だけでなく顎も同様です。噛みしめている時は顎にも力が入っている状態。そのまま過ごしていると、顎の筋肉が緊張しっぱなしとなるため顎関節に圧力がかかり歪んできます。
その結果、口が思うように開けられなくなったり、口の開閉時に痛みがでたり「ガッコン」といった大きな音がなるようになります。大きな音が顎から出る場合は、顎関節症になっている可能性が高いでしょう。
治療済みの歯や詰め物を守る
虫歯治療の詰め物などは、天然の歯と比べると力に対する耐性は弱くなります。そのため歯ぎしりや食いしばりの強い力に耐えきれず、早期に欠けたり取れたりすることも多くあります。すると再度治療しなければならなくなり、時間もお金もかかるうえに、歯にとって更なる負担になってしまうのです。
マウスピースをはめていれば力が直接歯にはかからず、治療済みの歯の詰め物を守れます。
寝る時にマウスピースを使う4つのデメリット
歯ぎしりや食いしばりをする人にとってマウスピースは口内を守る盾のようなものですが、以下のようなデメリットも考えられます。
- ・一時的な睡眠の質の低下
- ・朝の顎の痛みや音のひどさ
- ・コストがかかる
- ・手入れが面倒
対応策とともに紹介しますね。
一時的な睡眠の質の低下
新しい習慣を始めるとき、誰でも少なからず違和感を覚えるものですが、マウスピースも例外ではありません。特に、初めてマウスピースを装着して眠る際には、お口の中の異物感から「うまく眠れない」「寝付きが悪くなった」と感じる方がいらっしゃいます。
これは、普段と異なるものが口内にあることで、脳が一時的に覚醒状態になるために起こる現象です。しかしこれはあくまで一時的なもの。人間が新しい環境や刺激に慣れていく過程で起こる自然な反応であり、多くの方は1〜2週間ほどで違和感に慣れます。
この期間を乗り越えれば、マウスピースを装着していてもぐっすり眠れるようになり、マウスピースがもたらすメリットを十分に得られるようになります。
慣れないうちは毎日装着はせず、睡眠を優先させましょう。徐々に装着日を多くしていくことで、慣れさせてください。2週間以上しても装着に違和感があって眠りにくいようでしたら、担当歯科医に相談し、マウスピースの調整をしてもらってくださいね。
朝の顎の痛みや音のひどさ
今までの歯ぎしりや食いしばりによって噛み合わせが微妙にズレている方は、普段とは違う位置で歯がマウスピースによって固定されます。そのため、起床時に顎などに痛みやだるさを感じることがあります。
すでに顎関節症を起こしている方は、睡眠中に正しい噛み合わせの位置で歯を固定されることで、顎に違和感が出やすいもの。その結果、目覚めたときに無意識に顎の位置を戻そうとして、ガコッというような大きな音をたててしまうこともあります。音や痛みに驚いてマウスピースを使わなくなってしまう方もいますが、これも装着の違和感と同じく、時間の経過とともに慣れていくものです。
それでもつらいという方は、寝る前や起床時に顎関節あたりをマッサージしてみましょう。筋肉を柔らかくしておくことで、位置を固定されても痛みが出にくくなることが期待できます。また、歯科に相談してマウスピースの高さを調節してもらうことも有効です。
コストがかかる
マウスピースは、1つ数千円程度の自己負担が発生します。寝る時に使用するマウスピースには基本的に健康保険が適用されるため、数万円もするようなことはありません。とは言え、消耗品ですので定期的な交換も必要です。
人によって耐用年数は違いますが、早い方だと1年程度でマウスピースに穴が開いたり割れてしまったりします。その度に作り直す必要があるので、人によってはコストがかかってしまいます。
手入れが面倒
マウスピースは就寝中の口内に装着するため、唾液や細菌、歯垢などが付着します。そのため、歯と同じように毎日の丁寧なケアが不可欠です。
この「毎日の手入れ」を面倒に感じる方がいるかもしれませんね。しかし、手入れを怠るとマウスピースに細菌が繁殖し、口臭の原因になったり、虫歯や歯周病のリスクを高めたりする可能性があります。
装着の違和感と同様に、人は慣れると習慣として受け入れます。最初は面倒に感じることでもやがて「しなければ気持ち悪い」と感じるようになり、手間に思わなくなるでしょう。
マウスピースは歯科で作ろう!
前述したように、マウスピースには市販のものと歯科で作るオーダーメイドのものがあります。
強くおすすめするのは、歯科で作るオーダーメイドのマウスピースです。なぜなら、市販のマウスピースは万人用に作られた柔らかいものであるため自分の歯にぴったりと合わず、利用した結果、症状が悪化する可能性が高いからです。
症状が悪化すれば、結局その商品は無駄になります。さらに痛みなどの症状をなくすために歯科での治療が必要となり、より手間も時間もお金もかかることになってしまうでしょう。
特に、現在歯ぎしりや食いしばりで歯や顎などに痛みが出ている方は、最初からきちんと自分用に設計されたマウスピースを作るようにしてくださいね。
マウスピースの作成方法
歯科でのマウスピースの作り方は以下の通りです。
- ①型取りをする
- ②機械で樹脂の圧接をする
- ③余分な部分を切り取る
- ④研磨して尖ったところが出ないようにする
- ⑤本人の口にはめて状態確認、微調整を行う
用途によって硬いものから柔らかいものまであり、歯科医が目的に沿ったものを選択します。
マウスピース作成の費用と保険適用について
マウスピースに必要な費用は、健康保険が適用されるかされないかによって大きく変わります。
歯ぎしりや食いしばりで悩む方のためのマウスピースは健康保険が適用されるため、3割負担で約5,000〜7,000円程度です。
自費診療で保険を適用せずに作るマウスピースは、主に審美目的のもの。たとえば矯正用マウスピースやホワイトニング用マウスピースなどです。こちらはクリニックや目的によって異なりますが、大体2万円〜5万円が目安になります。
当院のマウスピース例
ハピネス歯科クリニックでは、患者様一人ひとりの歯型に合わせたマウスピースを作成しています。経験豊富な院長が丁寧にカウンセリングを行い、あなたに最適なマウスピースをご提案しますので、歯ぎしりや食いしばりでお悩みの方はぜひご相談ください。
【保険診療マウスピース例】
起きてからのマウスピースのケア方法
マウスピースを使った後は、正しいお手入れが欠かせません。使用後のケアを怠ると、マウスピースに細菌やカビが繁殖しやすくなり、口臭や虫歯・歯周病のリスクが増えます。
では、毎日の洗浄・保管の方法と、買い替えの目安となる劣化サインをみていきましょう。
マウスピースの洗浄方法と保管のコツ
毎朝することを、週に1回ほどすること、そして保管方法についてです。
朝起きたらすぐ流水で洗う
寝ている間に付着した唾液や汚れを落とします。柔らかい歯ブラシ(研磨剤の入っていないもの)で優しくこすりましょう。歯磨き粉は細かい傷の原因になるため避けてください。
専用の洗浄剤を週1〜2回使う
最低週に1回は、入れ歯用やマウスピース用の洗浄タブレットを使って目に見えない菌やニオイを抑えましょう。熱湯は変形の原因になるので避け、必ず水かぬるま湯を使用してください。
しっかり乾燥させてから保管する
濡れたままケースに入れるとカビの温床になります。ティッシュや清潔なタオルで水分を拭き取り、風通しの良い場所で自然乾燥させてからケースにしまいましょう。
保管ケースも清潔に保つ
ケース自体も菌が繁殖しやすいので、定期的に洗浄剤で洗います。
マウスピースの劣化のサイン
どんなに丁寧に使っても、寝る時のマウスピースは少しずつ摩耗・変形していきます。イメージとしては車のタイヤです。使ううちに少しずつタイヤが痩せて溝が無くなっていくように、マウスピースも次のような変化が見られたら、作り直しのタイミングです。
- ・ひび割れや欠けがある
- ・表面がザラザラして口当たりが悪い
- ・歯にしっかりフィットせず、外れやすくなった
- ・変色やニオイが取れなくなった
一般的に、保険適用のマウスピースは 2~3年程度で交換が必要 と言われています。ただし歯ぎしりが強い方は、半年ほどで摩耗してしまうことも。違和感や劣化を感じたら、早めに歯科医院で相談しましょう。
寝る時にマウスピースをはめる:FAQ
寝る時にはめるマウスピースについて、よくある5つの質問を紹介します。
- ・Q1. マウスピースは毎日つけなくてもいいですか?
- ・Q2. マウスピースをすると歯並びが悪くなりませんか?
- ・Q3. マウスピースを着けて寝ると、朝起きた時に顎がだるく感じます。これはなぜですか?
- ・Q4. マウスピースはどのくらいで効果が出ますか?
- ・Q5. マウスピースを紛失・破損してしまった場合、保険は適用されますか?
Q1. マウスピースは毎日つけなくてもいいですか?
A1. マウスピースは、歯ぎしりや食いしばりから歯や顎を守るためのものです。それらの症状は寝ている間に無意識で起こるため、効果を最大限に得るためには、毎晩欠かさず装着することをおすすめします。もし数日サボってしまうと、マウスピースをしていない間に歯や顎に大きな負担がかかってしまいます。旅行や出張に持参できるよう、携帯用のケースに入れておくようにしましょう。
Q2. マウスピースをすると歯並びが悪くなりませんか?
A2. 歯科医院で歯型に合わせて作製するマウスピース(ナイトガード)は、歯並びを動かすためのものではありません。むしろ、歯ぎしりや食いしばりによって歯がすり減ったり、余計な力がかかったりして歯並びが乱れるのを防ぐ役割があります。ただし、市販のマウスピースは、ご自身の歯に合っていないため、かえって噛み合わせがずれてしまうリスクがあります。必ず歯科医院で、ご自身の歯に合ったものを作製してもらうことが大切です。
Q3. マウスピースを着けて寝ると、朝起きた時に顎がだるく感じます。これはなぜですか?
A3. マウスピースを初めて装着した際、普段と異なる噛み合わせの位置で固定されるため、一時的に顎の筋肉に違和感やだるさを感じることがあります。これは「正しい噛み合わせの位置」に慣れるための過程であることがほとんどです。通常、1〜2週間ほどで慣れてきますが、痛みがひどい場合や違和感が長く続く場合は、マウスピースの高さや噛み合わせを再調整する必要があるかもしれません。まずは担当の歯科医師にご相談ください。
Q4. マウスピースはどのくらいで効果が出ますか?
A4. 個人差がありますが、多くの患者様が数日〜1週間ほどで効果を実感し始めます。具体的には「朝起きた時の顎の痛みが減った」「肩こりや頭痛が軽くなった」といった変化を感じられることが多いでしょう。ただし、これらの症状は、歯ぎしり以外の要因も影響している場合がありますので、あくまでも目安としてお考えください。
Q5. マウスピースを紛失・破損してしまった場合、保険は適用されますか?
A7. 健康保険が適用されるのは「最初に作製した日から半年以上経過している場合」です。半年以内に再作製する場合は、原則として自費診療となります。作製したマウスピースは大切に扱い、紛失しないよう保管場所を決めておくようにしましょう。
寝る時にマウスピースをはめて歯や顎の負担を軽減!
歯ぎしりや食いしばりが原因で出るつらい諸症状に悩んでいる方は、歯科に相談してマウスピースを作ってもらいましょう。自分の歯型にぴったり合ったマウスピースをはめて寝ると、睡眠中の強烈な歯ぎしりや食いしばりから歯や歯茎・顎周辺を守れます。
最初は違和感も強くほどほどにコストがかかりますが、違和感には割とすぐに慣れるはず。マウスピースをつけると寝ている間に微妙な噛み合わせのズレも矯正でき、口全体を大きな力から守ってくれます。デメリットよりもメリットの方が大きいため、マウスピースがおすすめです。