歯周病で歯槽骨が溶ける?! 歯槽骨の吸収の原因や予防・回復法を紹介
<当院の感染拡大防止について>
手洗い・アルコール消毒・うがいの徹底
ドアの開放、空調を強めに設定する 等、定期的に室内換気を行っております
次亜塩素酸水を使用し、空間除菌を行っております
感染リスクの高い来院者さまへの受診の自粛のご依頼、又はご予約日の変更のお願いをしております
スタッフ一丸となって、新型コロナウイルスの感染拡大防止に善処致します。
ご理解とご協力賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
歯を失うリスクが高いのは、虫歯よりも歯周病であるといわれています。それは、歯周病が歯を支えている歯槽骨という骨を溶かすから。歯槽骨がなければ、歯は保存できません。
歯の骨が溶けることを「骨吸収」と呼びます。
ここでは歯を支えている歯槽骨という骨の吸収について、その原因や、予防・回復の方法を紹介します。歯周病について知識を深め、自分の歯を守っていきましょう。
歯周病は日本の国民病! 歯槽骨を溶かす恐ろしい病気
歯周病は、日本人の成人の約8割がかかっているといわれる国民病です。歯周病菌が歯と歯茎の境目で繁殖、活動を活発化させると、歯茎だけでなくその周辺組織に炎症が及びます。
その結果、歯を支えている歯槽骨が溶ける(歯槽骨の吸収)のですね。土台を失った歯はぐらぐらと揺れ、簡単に崩れてしまいます。
歯は、一度失ってしまえばそれで終わりです。差し歯やインプラント、ブリッジなどによって噛む機能を回復させることは可能ですが、自分の歯を戻すことはできません。自前の歯でなければ経年劣化が早いうえに素材ごとのトラブルもあるため、やはり自分の歯を使うことがその人にとって一番です。
そのため、歯周病にはやはり気を付けなければなりません。
歯周病による歯槽骨の「吸収」とは?
「骨吸収」が起こる、その過程を説明しましょう。
口内清掃が十分ではなくプラーク(歯垢)が付着すると、口内にいる数億の細菌の住処になります。
細菌が増殖して、歯と歯茎の境目に歯周ポケットと呼ばれる深い溝を作るのですね。その結果、少しずつ歯は歯茎から離れていき、できた隙間にさらに細菌が入り込んで、周辺組織に炎症を起こします。
歯槽骨は歯を支える唯一の骨。その歯槽骨まで細菌が達すると、骨を破壊します。これが歯槽骨の吸収です。
ただし、歯周病菌が直接骨を溶かしているわけではありません。
歯周病菌に感染した結果、人が持つ免疫力によって、歯周病菌に感染した部分を排除しようとする反応が起こります。つまり、自浄作用ですね。
そのため実際には、感染した骨を白血球(免疫)が溶かし、人体に影響がないようにしようとしているのです。歯周病菌による「破壊」ではなく自らの「吸収」と呼ぶのは、そういう理由があります。あくまでも、骨が勝手に溶けるのですね。
とは言え、吸収の原因を作ったのは歯周病菌であることは間違いありません。そのため、わかりやすく「歯周病によって歯の骨が溶ける」と説明されています。
歯槽骨が吸収する原因4つ
では、歯槽骨が吸収する4つの原因について紹介しましょう。
- ・歯周病
- ・歯ぎしりや食いしばり
- ・ブリッジや入れ歯のフック
- ・歯の喪失
歯周病
歯槽骨が吸収する最大の原因は、歯周病です。
前述したように、歯周ポケット内に歯周病菌が増えると血液内の白血球が集合し、細菌が体内へ入ることを阻止します。
しかし細菌の力の方が大きい場合、免疫は歯槽骨を吸収することで感染から逃れようとするのです。
歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりによって硬い歯が揺さぶられたり沈んだりすると、その周辺にある柔らかい歯槽骨が吸収します。
特に影響が出るのは30歳を過ぎたころから。それまでに比べて体の抵抗力が落ち、骨も柔らかさを失います。そのため、歯周病菌に負けてしまうのですね。
歯ぎしりによって歯と歯槽骨の間に隙間ができ、そこに細菌が侵入して感染、吸収となります。
【関連記事】睡眠中の歯ぎしりとその対策についての記事はこちら
睡眠中の歯ぎしりは健康リスク大! すぐに取り組みたい歯ぎしり対策3選
ブリッジや入れ歯のフック
ブリッジの土台になっている歯や、入れ歯のフックがかかっている歯である場合、常時かなりの負担がかかります。その結果、土台やフックがかかる歯の歯槽骨にも影響し、歯茎と歯の間に隙間ができることで吸収が始まります。
歯の喪失
支えるべき歯がなくなると、歯槽骨は吸収します。歯があるうちにかかっていた負担がなくなることで、骨がやせ細ることが原因です。
噛む機能を復活させるためには入れ歯も有効ですが、歯槽骨にとってはあまり良い効果がありません。歯槽骨をやせさせないためには、骨に埋め込むインプラント治療が必要です。
【セルフケア】歯槽骨の吸収を予防する手段
一度吸収となってしまった歯槽骨は、残念ながら速やかに回復できません。状態によって回復は望めるのですが、とても時間がかかります。
そのため、そもそも歯槽骨が吸収しないように予防することがとても大切です。次の2つを守り、歯槽骨を守りましょう。
- ・正しい歯磨きとフロスなどでの清掃
- ・歯科で定期健診を受ける
毎日の清掃がどれだけしっかりできるかで、自分の歯の寿命は大きく違ってきます。正しい歯磨きを毎食後に行い、デンタルフロスや歯間ブラシ、マウスウォッシュなどを使って清掃レベルを上げていきましょう。
また、歯科の定期健診を受けるようにしてください。3カ月に1回、プロに口内のチェックをしてもらうことが大切です。
歯石や歯周ポケットの奥深くに入り込んだ歯垢など、機械でしか取れない汚れもあります。また、総合的に口内の環境を確認することで、トラブルを小さなうちに発見可能です。早期発見が最も痛みがなく、お金や時間をかけずに済むため、最低でも1年に2回は歯科を受診してくださいね。
【関連記事】歯科の定期健診についての記事はこちら
歯の検診の頻度は3カ月に1回が推奨! その理由と検診内容や費用など
【歯科】歯槽骨を回復させる手段
一度吸収した骨は簡単には元には戻りませんが、現代ではそれを速やかに回復させる技術があります。
歯科で歯槽骨を回復させるためにあるのは、以下の3つ。これらは「再生医療」と呼ばれています。
- ・歯周組織再生誘導法
- ・エムドゲイン法
- ・骨移植法
いずれにせよ、100%以前の状態に戻せるわけではありません。しかし、歯槽骨の回復には有効な方法となっています。
歯周組織再生誘導法
重度の歯周病によって失った歯周組織は、歯周病治療を行っても以前の状態には戻りません。先に周囲にある歯茎が健康を取り戻すと、骨を再生させるスペースがなくなってしまうためです。
そこで利用するのが、歯周組織再生誘導法。
歯周組織再生誘導法(GTR法)は、吸収してしまった歯槽骨を再生する方法です。具体的には、吸収した歯槽骨の場所にメンブレンと呼ばれる人工の膜を設置します。そうしてスペースを作ることで先に回復した歯茎に邪魔されずに済み、骨ができるのですね。処置には1時間程度かかります。
注意点としては、自費治療で5万〜10万円と高額になること、すべての歯周病に利用できるわけではないこと、効果には個人差があることなどです。処置後は痛みや腫れもあります。
ただし、場合によっては保険診療で受けられることもあり、その場合の費用は1万5,000円ほどとなっています。
エムドゲイン法
より速いスピードで骨を再生するなら、エムドゲイン法です。
エムドゲイン法は、豚の特殊なたんぱく質を利用したもの。歯石や細菌に汚染されたセメント質をきれいに掃除し、歯根の表面にゲル状のEMD(エナメルマトリックスデリバティブ)を塗ります。これがセメント質を誘導し、歯槽骨だけでなく歯周組織の再生をはかるのです。
再生までに時間がかからないことで、口内の細菌が処置部分につきにくくなるため、成功率が高くなります。
ただし自費治療のみで、費用は10〜15万円程度です。
骨移植法
自分の骨を口の他の部位から持ってきたり人工の骨を用意したりして、必要な部位に移植する方法です。
こちらは保険治療も自費治療もできます。保険を使う場合は1万5,000円ほど、自費治療なら10〜15万円ほどです。
歯周病が怖いのは歯槽骨が吸収するから! 早めの対処が大切
歯周病が怖い病気と言われるのは、歯を支える骨を細菌感染によって吸収へと追いやってしまうためです。歯周病が進行すれば自己免疫によって感染した骨が溶け、歯はいずれ抜けてしまいます。
そうならないためには、歯周病の早期ケア、そして口内環境の改善が必要です。
正しい歯磨きをして口内の清潔を保ち、定期的に歯科を受診して歯周病の進行を防ぎましょう。
歯槽骨を大切にすることは結局、全身の健康を守ることにつながりますよ。