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激痛の原因は? 歯髄炎の進行レベル別症状と治療・予防法を解説


激痛の原因は? 歯髄炎の進行レベル別症状と治療・予防法を解説

こんにちは、秋田のハピネス歯科クリニック 大久保です。今回は、つらい痛みを引き起こす歯髄炎について解説します。

「何もしていないのにズキズキと痛む」
「夜、痛みで眠れない」
このような激しい歯の痛みを感じたとき、それは歯髄炎(しずいえん)という病気のサインかもしれません。

歯髄炎は、歯の内部にある神経が炎症を起こしている状態で、自然に治ることはありません放置すると歯の神経が死んでしまい、最終的には歯を失う原因にもなりかねない、非常に怖い病気です

この記事では、歯髄炎とは何かという基礎知識から、原因、進行レベルごとの症状、自宅でできる応急処置、予防習慣、そして歯科での治療方法まで、歯髄炎に関する情報をわかりやすく解説します。あなたの歯の激痛がどのレベルにあるのかをチェックし、早期治療のために役立ててください。

歯髄炎とは?歯髄の役割と炎症のメカニズム

歯髄炎のイラスト

まずは歯髄炎とは何かについて、そして炎症が起こるメカニズムについてみていきましょう。

 

歯髄の役割

歯の内部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる柔らかい組織があります。歯髄は“歯の神経”とも呼ばれ、痛みを感じ取る神経線維や血管が集中している重要な部分です

この歯髄があることで、歯は外からの刺激を感知し、栄養を取り込みながら健康な状態を保っています。

歯髄の主な役割は次の通りです。

  • ・痛みや温度を感じ取る感覚機能
  • ・歯に栄養を届ける血流機能
  • ・歯を修復するための細胞を供給する機能

つまり歯髄は、歯の「生命線」ともいえる存在です。しかし、この歯髄が炎症を起こすと、強い痛みやズキズキとした不快感が生じます。これが「歯髄炎」です。

 

炎症が起こるメカニズム

歯髄炎は、虫歯や外傷などによって細菌が歯の内部まで侵入し、歯髄が感染・炎症を起こすことで発症します。

虫歯が進行すると、最初はエナメル質や象牙質が溶けていき、最終的に神経のある歯髄へ達します。歯髄内に細菌や毒素が侵入すると、体はそれを排除しようと反応し、血流が増えたり、免疫細胞が集まったりして腫れが起こるのです。

ところが、歯髄は硬い歯に囲まれているため、炎症によって腫れても逃げ場がありません。その結果、圧力が高まり、神経が圧迫されて激しい痛みが生じます

初期段階では冷たいものがしみる程度でも、炎症が進むと何もしなくてもズキズキ痛むようになります。歯髄炎は「閉ざされた空間で起こる炎症」であるため、痛みが強く出やすいのが特徴です。

 

歯髄炎を引き起こす主な5つの原因

歯髄炎を引き起こす主な原因には、以下のようなものがあります。

  • ・虫歯
  • ・歯への強い衝撃による外傷・破折
  • ・歯ぎしり・食いしばり
  • ・進行した歯周病
  • ・度重なる虫歯治療による刺激

 

虫歯

前述したように、虫歯が進行し、細菌が歯髄腔まで到達することで炎症が起こります。虫歯は最も多い歯髄炎の原因です。

 

歯への強い衝撃による外傷・破折

激しいスポーツなどで歯をぶつけたり、高い場所から落ちたりした場合、歯髄が炎症を起こすケースがあります。

歯の歯髄は根の先の一部。そのままアゴの骨の中にある骨髄と繋がっています。そのため歯に強い衝撃を受けたはずみで、歯髄と骨髄が切断してしまう場合があるのですね。

切断されたところが炎症を起こし、強烈な痛みが出ます。このケースでは、歯の神経を抜く治療を行わねばなりません。

 

歯ぎしり・食いしばり

寝ている間の歯ぎしりや、無意識の食いしばりも歯髄炎の原因になります。

通常神経が生きている歯は頑丈なのですが、強い力が歯に継続的に加わると歯の内部に微細なひびが入り、神経が刺激を受けやすくなるからです。

こうしたケースでは、痛みの原因が見た目ではわかりにくく、「虫歯じゃないのに痛い」と感じる人も少なくありません。

【関連記事】歯ぎしりについて、その種類・原因・症状などの記事はこちら
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進行した歯周病

歯周病は歯周病菌によって歯の周囲の骨が溶けていき、最終的には歯を失うという怖い病気です。なんと日本人で成人の約8割の人がかかっていると言われる、国民病でもあります。

その歯周病が進行した結果、歯の骨が溶かされて歯の根の先から細菌が侵入し、歯髄炎が発生。この場合には歯の根の一部を切断し、神経を抜く必要があります。

 

度重なる虫歯治療による刺激

歯の中には複数の管があり、それが歯髄と繋がっています。そのため何度も虫歯になった歯の治療を行うと、管を通じて歯髄がダメージを受けるのですね。

結果、歯髄炎を発症することがあります。

自然に回復する場合もありますが、反対に神経が死んでしまうこともあるため、治療後にも痛みが続くようなら早めに歯科を受診しましょう。

 

歯髄炎のレベルに応じた症状

頬を押さえる女性

歯髄炎の症状は、基本的には「痛み」のみです。しかし進行レベルに応じて痛みの強さや反応するものが違います。

どのように進行するのか、順番にみていきましょう。

 

歯髄炎のレベル①初期段階:可逆性歯髄炎

歯髄炎の初期段階は、まだ神経が生きていて炎症も軽い状態です。この段階を「可逆性歯髄炎」と呼びます。炎症が軽度で、神経を助けられる可能性があるレベルです。

症状の特徴内容
痛みの誘発冷たいものや甘いものを飲んだり食べたりしたときのみ痛む。
痛みの持続刺激がなくなると、数秒以内に痛みが完全に消える。
自発痛なし。普段は痛みを感じない。

 

歯髄炎のレベル②進行段階:不可逆性歯髄炎

炎症が進行すると「不可逆性歯髄炎」となります。痛みはズキズキと強く、夜寝ているときに突然痛みで目が覚めることも多いでしょう。温かい飲み物でも痛みが誘発され、仕事や食事がつらく感じるようになります。

この段階では自然に治ることはありません。神経を抜く治療(根管治療)が必要です。

症状の特徴内容
痛みの誘発冷たいものだけでなく、温かいものもしみて痛む。
痛みの持続刺激がなくなっても、痛みが数分〜数時間持続する。
自発痛あり。何もしていなくても、脈拍に合わせたような「ズキズキ」「ガンガン」という強い痛みが続く(拍動痛)。
特徴的な痛み夜間や入浴時など、体温が上がり血流が増加すると痛みが激しくなる。

 

歯髄炎のレベル③末期段階:神経の壊死と慢性症状

さらに炎症が進むと、歯髄が壊死して神経が完全に死んでしまいます。これが「歯髄壊死」や「慢性歯髄炎」と呼ばれる状態です。

症状の特徴内容
自発痛強い痛みが一時的に消える。一見治ったように感じるが、病気は進行している。
誘発痛虫歯で欠けた穴に食べかすなどが詰まった時だけ、内圧の上昇により激しく痛むことがある(慢性潰瘍性歯髄炎の急性化)。
その他歯の色が灰色に変色したり、歯髄の腐敗による強い口臭・腐敗臭が生じることがある。

「痛くなくなった=治った」ではない点に注意が必要です

 

歯髄炎はセルフケアできる? 痛みを軽減させる方法3つ

歯が痛いけど今は歯科にいけないという方は、どうやって痛みを軽減させればよいでしょうか。

次の3つを試してみましょう。

  • ・鎮痛剤を飲む
  • ・冷やす
  • ・ものを噛まない

ただし、いずれにせよ一時的な「ごまかし」です。根本的な治療にはなりませんので、早々に歯科を受診するようにしてくださいね。

また、温かいタオルを当てたりお風呂で温まったりすると、血流が増えて痛みが増すことがあります。アルコールや喫煙も炎症を悪化させる原因となるため、痛みが強い場合は刺激も避けるようにしましょう。

 

鎮痛剤を飲む

痛みは我慢すべきではありません。すぐ歯科に行けない夜中であるような場合、まずは市販の鎮痛剤を飲みましょう。

歯医者で処方される鎮痛剤にはロキソプロフェンという成分が入っています。常日頃から同じ成分が含まれている鎮痛剤を家に常備しておくことをおすすめします。

 

冷やす

歯髄炎の痛みは血液の流れによるものです。そのため、痛い場所を冷やすことで血流を少なくし、痛みを軽減させましょう。

冷やしたタオルを頬側にひっつけ、口の内側に氷を入れてみてください。冷たいものでしみる場合は無理をせず、外側から冷やす程度にとどめましょう。

 

ものを噛まない

歯が刺激を感じると痛みます。歯科に行くまでは、できるだけ歯でものを噛まないようにしてみましょう。栄養は高カロリーのゼリーなどで摂取し、できるだけ早く歯科を受診してください。

 

歯髄炎を放置するリスク

歯科に行かずに放置していて痛みが消えたとしても、それは神経が死んで麻痺しただけであり、細菌感染は止まっていません。歯髄炎を放置すると、以下のような深刻なリスクがあります。

まず、歯髄が壊疽(腐敗)することで、歯の色が黄色や灰色に変色し、強い腐敗臭が発生します。

さらに、歯髄で増殖した細菌は歯の根の先端から溢れ出し、あごの骨の中に感染を広げる根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)へと移行します。この炎症により、根の先に膿瘍(のうよう)が形成され、ひどくなると歯ぐきに「ニキビ」のような小さなできもの(フィステル)ができ、膿を口内に出し始めます。やがて顔やあご全体が腫れ上がり、発熱やリンパ節の腫れといった全身症状を伴うこともあります。

感染が広範囲に及んだり、歯の根が著しく破壊されたりした場合は最終的に歯を救えず、抜歯が必要になる恐れが高いでしょう

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歯髄炎の歯科での治療方法

虫歯の模型

では、歯科に行って受ける歯髄炎の治療方法です。歯髄炎は放置しても自然治癒しないため、その原因に応じて以下のような治療を行います。

  • ・虫歯を治療する
  • ・根管治療をする

 

虫歯を治療する

前述したように、歯髄炎になる原因の第一位は虫歯です。そのためまずは虫歯の治療が必要です。まだ歯髄が細菌に侵されていない場合には、歯髄の保護をしなければなりません。

麻酔をして虫歯を取り除いたあと、菌が歯髄へ入るのを遮断します。

ただし、炎症で痛みがひどい場合には麻酔が効きにくいこともあります。そのため、場合によっては鎮痛剤や抗生物質を使って症状が落ち着いてからの治療になります。

 

根管治療をする

根管治療とは、歯の根を取ることを指します。歯は神経を取ることによって「死んだ」状態になりますが、汚染された神経を残してはおけません。

根管治療の流れは以下の通りです。

  • 1、歯に麻酔をかける
  • 2、虫歯部分を削り取る
  • 3、ラバーダムという器具を歯の周囲に装着して唾液が歯の根の中に入り込まないようにする
  • 4、ダイヤモンドのバーを使って歯の神経を取り除く穴を開ける
  • 5、歯の神経の入り口から器具を使って神経を取り出す
  • 6、根の中の消毒を徹底的に行う
  • 7、歯の根がきれいになったら薬を詰める
  • 8、神経を取ってもろくなった歯が割れないように、土台を作ってかぶせる

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歯髄炎を予防するための習慣

歯髄炎を最も効果的に防ぐ方法は、その主な原因である虫歯や歯周病の進行を防ぐことです。日々のホームケアと専門的なプロケアを組み合わせ、歯髄を守りましょう。

 

ホームケアを徹底する

正しい歯磨きをすることが最も大切です。虫歯菌の温床となる歯垢(プラーク)を丁寧に取り除くため、ブラッシング方法を身につけましょう。

また、実は歯ブラシだけでは6割ほどしか汚れが取れていません。歯ブラシを使った後は、フロスや歯間ブラシを使って歯間の汚れを取ってください。就寝前はマウスウォッシュで殺菌することもおすすめします。

また食生活の見直しも効果的です。砂糖を多く含む飲食物を控えたりダラダラ食いを避けたりし、口内のpH値を安定させて虫歯リスクを下げましょう。

 

歯科で定期健診を受ける

3〜6ヶ月に一度は歯科医院を受診し、口内の健康を維持することが非常に重要です。虫歯や歯周病も初期で発見できれば、歯を削ったり痛い思いをする必要はありません

プロによるクリーニング(PMTC)では、歯磨きで取りきれないバイオフィルムや歯石を除去できます。また、歯質を強化し、虫歯に対する抵抗力を高めるために、定期的なフッ素塗布を受けましょう。

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歯ぎしり・食いしばりの対策をする

歯ぎしりや食いしばりの自覚がある場合、歯に過度な負担がかかるのを防ぐため、歯科医院でマウスピース(ナイトガード)を作成し、就寝時に装着しましょう。なお、市販でもマウスピースは販売されていますが、自分の歯型と合っていなければ症状がより悪化する可能性が高くなります。マウスピースは歯科で自分専用のものを作ってもらってくださいね。

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歯髄炎のよくあるQ&A

Q&A

歯髄炎について、よくあるQ&Aを紹介します。

・Q1:痛みが消えたら歯髄炎は治ったということですか?
・Q2:歯髄炎の治療にはどれくらいの期間がかかりますか?
・Q3:歯髄炎の激しい痛みで麻酔が効きにくいことはありますか?
・Q4:歯髄炎は子どもにも起こりますか?
・Q5:歯髄炎になったら歯を抜かないといけませんか?
・Q6:歯髄炎は再発することがありますか?

 

Q1:痛みが消えたら歯髄炎は治ったということですか?

A:痛みが消えたのは、歯の神経が炎症の末期で完全に死んでしまった(歯髄壊死)サインである可能性が極めて高いです。痛みはなくなりますが、歯の根の先で感染は進行しており、放置すると膿が溜まる根尖性歯周炎に移行し、最終的に抜歯のリスクが高まります。痛みが消えたときこそ、すぐに歯科を受診してください。

 

Q2:歯髄炎の治療にはどれくらいの期間がかかりますか?

A:初期の可逆性歯髄炎なら、虫歯の治療のみで1回〜数回で終わることもあります。不可逆性歯髄炎の場合は、根管治療を数回に分けて行うのが一般的です。治療回数は歯の状態や症状によって異なるため、一概には言えません。

 

Q3:歯髄炎の激しい痛みで麻酔が効きにくいことはありますか?

A:はい、あります。特に不可逆性歯髄炎の中でも「急性化膿性歯髄炎」のように炎症が非常に強い場合、神経が過敏になり、通常の麻酔が効きにくいことがあります。その際は、抗生物質や鎮痛剤の投与で炎症を一時的に抑えてから、再度麻酔を施すなどの対応が必要になることがあります。痛みで麻酔が効かない場合は我慢せず歯科医師に伝えましょう。

 

Q4:歯髄炎は子どもにも起こりますか?

A:はい、子どもでも虫歯や外傷が原因で歯髄炎になることがあります。特に乳歯や生えたばかりの永久歯は神経が太く敏感なので、早めのケアが重要です。

 

Q5:歯髄炎になったら歯を抜かないといけませんか?

A:必ず抜歯になるわけではありません。初期であれば神経を残す治療も可能ですし、進行しても根管治療で歯を保存できるケースがほとんどです。ただし、放置すると抜歯が必要になることもあります。

 

Q6:歯髄炎は再発することがありますか?

A:はい。治療後も虫歯の再発や歯のひび割れなどが起きると、再び炎症を起こすことがあります。治療後も定期検診を受けて歯の状態を確認しましょう。

 

歯髄炎は放置厳禁! 症状が軽いうちに歯科を受診しよう

歯髄炎は、歯の命ともいえる歯髄が炎症を起こしている状態です。痛みが強く出る上に自然治癒はしないため、まだ大丈夫だからと放置しているとどんどん悪化してしまい、最終的には歯を失ってしまいます

知覚過敏のような、冷たいもので歯がしみる原因はいくつかあります。しかし、歯に痛みを感じたらそれは何らかのトラブルが起こっている証拠です。放置はせず、痛みが弱い間に歯科を受診しましょう。

80歳のときに20本の自分の歯が残っていることが、将来の健康状態に大きく影響すると言われています。早めの対処で将来残る自分の歯の数を多くしていきましょうね。

ハピネス歯科クリニックでは、痛みに配慮した治療と丁寧なカウンセリングで、歯をできるだけ残す治療を行っています。歯の痛みや違和感がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。


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監修・執筆

ハピネス歯科クリニックの院長、大久保 圭

ハピネス歯科クリニック 院長 大久保 圭

秋田市の歯医者。出身地:北海道。出身大学:岩手医科大学歯学部。 ハピネス歯科クリニックでは、歯の悩みが何もない健康を保っていただくために、予防歯科を特に大切に考えています。 本ブログを通して、あなたの健康づくりに役立つ質の高い情報発信を心がけています。

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